第9章 好きって何?
「団長にされた時はすごく動揺したけど、ちょっと嬉しくもあったんです…自分のおかげで疲れが癒えたと言ってくれたので。」
ハンジは黙ってエマの話を聞いている。
エマは赤らめた頬を冷ますように両手を押しつけながら続けた。
「へ、兵長の時も驚いたんですけど、すごく…心地良く感じました。何故かは分からないんですけど…」
「…ふぅーん」
ハンジは一言だけ発すると、エマを見つめたままそれ以上何も言わない。
「あの、ハンジさん?」
「何となくわかった。」
「何がですか?」
「エマの気持ち。」
ハンジは人差し指を口に当てて、ニカっと歯を出して明るく言った。
そんな事を言われてしまえば、エマは藁にもすがるような思いでハンジに詰め寄った。
「え?!教えてください!」
「エマ。それは自分で気付いた方がいいと思うなぁ。
私が何か言ってしまったら、その意見に惑わされてしまうかもしれないだろ?」
「う…確かに…」
「自分の気持ちとよく向き合って考えてみるといいよ。」
「よく、向き合って…」
ハンジの言葉を確かめるように復唱すると、エマは顔を上げた。
「分かりました。分からないなりに少し悩んでみようと思います。」
「うんうん!まぁあんまり考え込みすぎないで、パンクしそうになったらいつでもおいで。私の熱い抱擁で君を全力で癒してあげるから!」
「ありがとうございます、ハンジさん。最近一人で悶々としてたので気持ちが軽くなりました!」
「これくらいどうってことないよ!それにしても…エマもなかなか大変な人達に好かれちゃったねぇ。」
「大変?」
ハンジの言った意味が分からず首をかしげると、彼女はニヤリと笑みをこぼしながら楽しそうに続けた。
「あの二人、普段はクールで涼しい顔してるけど、実は血の気が多いところもあるからね。エマ、ぼーっとしてて食べられちゃわないようにね!」
「た、食べられる…?」
さっきからハンジの言葉の意味がよく分からない。
ハンジは不敵な笑みを浮かべながら、そんな純粋無垢な少女を実に楽しげに見つめているのであった。