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【進撃の巨人】時をかける—【リヴァイ】

第8章 エルヴィンの憂鬱




「き、急にそんな真顔で聞かれたらこうなっちゃいますよ…」

「ということは他にも何かあったんだな?」

エマはリヴァイから目を逸らして押し黙る。


「俺には言えないようなことか?」

「い、いえ、そんなことは何も……」

「ならなんだ?」

「えと…」




…言えない。


抱きしめられたなんて、兵長には言えない。




なかなか具体的なことは何も答えようとしないエマ。


すると痺れを切らしたリヴァイは、おもむろに口を開いて言葉を放った。




「例えば………こんなことか?」






「!!?」









え、何これ、デジャブ…?










いきなり強く腕を引かれたかと思うと、視界が暗転してしまった。





「あ、あの…」


「寒いからちょうどいいだろ。」


「…………」






エマはベンチに座ったまま、リヴァイの胸に倒れ込むようにしてその腕に包み込まれていたのである。








「あいつも手が早いからな。何となく予想はついてた。」


「………」


兵長だって同じことしてるじゃないかと一瞬思ったが、エマは口を噤んだ。


それよりも、それよりも、




この状況は一体なんなんだ……







「寒いな…」


リヴァイは静かに呟くと、エマの身体をさらに密着させるように抱きしめ直す。



「あの…へいちょう……」

「なんだ?」

「とても、近いです……」

「そうだな。」



心臓はまたも最高速度で脈打っていたが、頭上から降ってくる低音が直接脳に響き渡って心地いい。

冷たい空気の中、衣服越しだが確かな温もりを感じてすごく安心する。


それは今まで経験したことがないとても不思議な感覚だった。



動揺を隠しきれないエマとは対照的にリヴァイは落ち着いたトーンだったが、胸元にあてがわれた耳に伝わる彼の鼓動も心なしか少し早い気がした。




「俺にこうされるのは嫌か?」

「…いえ、いやではありません。」

「ならどんな気分だ?」



そ、そんな率直に聞く…?!




抱きしめたまま飛んできた直球すぎる質問にエマは心底焦ったが、この人にはもう誤魔化しが効かないと悟ったエマはゆっくり口を開くのだった。


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