第5章 "過去"というライバル
「行こ行こ。眠れない時は、酒飲むのがいちばん!」
男達に強引に腕を引っ張られ、肩を抱かれた。
「ホントに、離してください!」
抱かれた肩の腕を外そうと身体を捻るも、大柄の男二人には、リラの力では敵わない。
「新人同士仲良くしようぜ?な?」
かなり強引に彼女を連れていこうとする二人。
「嫌!離して!」
「大人しく来いよ!」
と、一人がリラを無理やり肩に担ぎ上げ、廊下を歩き始めた。
「きゃッ!おろしてッ!私は食堂に行きたいの!」
抵抗しようと必死にもがいていると、聞き覚えのある声がリラの耳に届く。
その声はとんでもなく低かった。
「おいおい、お前ら!俺の女をどこへ連れていくつもりだ?」
サボが、腕を組み壁に寄りかかって二人の行く手を阻んだ。
「ヒィィっ!…さ、参謀総長!!」
「彼女を返してもらおうか…!!」
さらに低い声で二人を威圧した。
「…す、すみませんでした!!」
あまりの威圧に怯え、慌ててリラを下ろす二人。
「謝るのは俺にじゃねぇだろっ!!嫌がってるのに無理やり連れていこうとしやがって!!!」
怒りに震え、二人の頭を武装色の覇気を纏って殴ったサボ。
彼はこういう所は容赦しない。
「「ヒイィっ!すみませんでしたっ!!」」
二人はペコペコと何度も頭を下げてリラに謝った。
「お前らっ!今日のところは俺の中だけで留めておくが、今度また手を出してみろ!!次はドラゴンさんに報告するからな。そうなれば、命がないと思え!!失せろっ!!二度とそのツラ見せるんじゃねぇ!」
二人はサボから逃げるようにバタバタと走ってその場を去っていった。
その姿をボーッと見つめていると、ふいに抱き上げられた。
「…サボ…どうしてここにいるってわかったの?」
「それはな…秘密だ…あーあ、身体冷えてるじゃねぇか…」
「えー、教えて?」
上目遣いで、甘えた感じを出してみる。
「嫌だね。教えない。食堂へでも行くつもりだったのか?」
「うん。ホットミルクを貰おうと思って。サボまだお仕事あるでしょ?だから一人で寝ようと。大丈夫、ホットミルク飲めば眠れるから。2週間一人の時、ずっとも…」
サボがリラの言葉を遮った。
「誰が一人で眠らせるなんて言ったんだ?今日はもう仕事は切り上げる。俺の部屋でいいよな?」