第5章 "過去"というライバル
「あぁ、そうだな。そろそろ寝ないと…」
絡めていた腕を緩め、自分の腕にリラの頭が乗るように、優しく寝かせた。
そしてサボは、横向きになり、リラの腰を引き寄せる。
「なぁ、リラ。」
「なぁに?」
サボの呼びかけに、リラは仰向けのまま、顔だけサボに向けた。
「明日、リラが寝てる間に行くことになるかもしれない…」
「サボが起きたら起こして。」
「寝てていいよ。」
「ううん、起こしてくれた方がいい。いつ起きるのかなってかえって気になって眠れないから。」
「…そんな可愛いこと…言うなよ…ますます行きたくなくなるだろ…」
髪を撫でてやると、気持ちよさそうに目を細める彼女が愛しい。
「見送りたいから、起こしてね。」
「わかった。もう、寝る。」
そう言うと、サボは肘を付いて身体を起こし、彼女におやすみの口付けをする。
「おやすみ。」
「おやすみ、サボ。」
サボはリラを抱き枕のように抱きしめ、眠った。
リラも、サボに守られてる安心感から、今まで眠れなかったのが嘘のようにぐっすりと眠った。
「………きて…」
夢の中で誰か呼んでる?
「……リラ…」
…誰?サボ?
「……リラ起きて……」
優しく唇が触れた。
目を開けると、サボが見つめていた。
「…おはよう。」
大きな美しい瞳でサボを見つめ返す。
「大丈夫?まだ寝てても良かったのに。」
ふわりと金髪が揺れ、顔が近づき、唇が塞がれた。
「おはよう、リラ…」
離れたくないというように、サボはリラを抱きしめていた。
「起きなきゃ…起こしてくれてありがとう。」
リラが身体を起こそうとすると、サボが引き止めた。
「もう少し、このまま…二週間も離れるんだ…リラの温もりを身体に刻みつけておきたい…」
「少しだけよ。サボ…」
サボの頭を撫でると、サボは目を細め、少しするとサボは起き上がった。
リラもそれに釣られて起きた。
「……行かなきゃ…」
サボはリラの頬を撫で、引き寄せると唇を重ねる。
啄むように唇を貪り、チュッと吸い上げ唇を離した。
「電伝虫、かけるから。」
そう言ってサボは部屋を出ていった。