第5章 "過去"というライバル
リラは視線を感じ、タオルから顔を覗かせた。
「コアラさん、ごめんなさい、サボの許可なく言っていいか分からなくて…」
「つまり、あの話し合いをさせた時に、相思相愛になったってことね?」
「もう、コアラいいだろ?お前は部屋に戻れ。」
困っているリラを庇うかのようにサボは、コアラを部屋へ戻るように促した。
「これはこれは、気が付きませんで。いい?サボくん!彼女作るのはいいけど、仕事に支障のないようにね!二人とも、加減すること!分かった?」
コアラが二人を交互に見て、注意をする。
「わかった、わかった。おやすみ。」
とサボがコアラの背中を押して部屋の外に押し出し、扉を閉めた。
「ちょっとーっ!もう!」
コアラはリラの部屋の扉をドンと叩いて自分の部屋へ戻った。
「…サボ…コアラさんにあんなこと…」
「いいんだ、うるさくて仕方ないから。それより、サトと早く二人になりたかったから……」
座っているリラの膝に頭を乗せ、腰に腕を回した。
リラは、サボの金色の髪を優しく撫でた。
「サボ、髪の毛乾かしたいの、ちょっと待っててくれる?」
すると、サボは身体を起こし、彼女の手にあるタオルを取って、リラの漆黒の髪を乾かし始めた。
「……サボ…ドライヤーかけるから、大丈夫よ?」
「なら、ドライヤー貸して。」
サボがニコッと笑いかけたので、リラはその笑顔に促され、ドライヤーをサボに渡した。
サボはドライヤーをかけながら話しかける。
「綺麗な髪…ドライヤーの風に乗っていい香りがする…」
と髪に鼻を近づけ匂いを嗅いだ。
そして、彼女の綺麗な髪にキスを落とす。
乾かし終えると、後ろからリラをギュッと抱きしめた。
「あー、行きたくないな…ずっとリラといたい…」
サボは髪に顔を埋め、呟いた。
「お仕事、ちゃんとしないと、コアラさんに怒られるわよ?」
そうクスクス笑う彼女に、サボは頬を膨らませる。
「……笑うなよ…ほんとに行きたくないんだから。」
「サボは、結構甘えん坊なのね。」
「リラだからだよ。甘えたくなる。でも、男らしいとこもあるだろ?」
「そうね。その男らしいところが私をドキドキさせる。ギャップがあって私は好きよ。…サボ、もう寝ないと。」