第4章 もう一度触れたくて
部屋にはサボと二人きりだ。
二人の間には、しばらく沈黙が流れていたが、その沈黙を破ったのはサボだった。
「…この間は…ごめん。でも、可愛いいから誰でもいいってわけじゃないし、可愛くても好きじゃなきゃキスしない。そこは、分かって欲しい…」
サボの声は、最初は消え入るような声だったのに、いつの間にか声を荒らげて、力が入った声になっていた。
「…好きじゃないくせに…」
リラは、俯いて呟くように言った。
「好きだよッ!リラのこと!キスしたいからキスした!触れたいから、触れる!抱きしめたいから、抱きしめる!好きじゃなきゃそんなことしない!!」
「…私の気持ちは…無視?」
「…だから、ごめん…嫌だったよな…?」
「…ううん…」
「え?」
「…嫌じゃ…なかった…でもびっくりして…」
「……!」
リラのまさかの反応に驚いてサボは大きな目をさらに見開いた。
「嫌じゃ、なかった?」
「うん…だけどサボがなんでそんなことするのか分からなくて…」
「それは、好きだからだよ!…もう一度、キスしたい…」
腕を掴んで引き寄せ、強く抱きしめた。
「…サボ…先日会ったばかりよ?好きだなんて…信じられると思う?」
「好きになるのに、時間なんか関係ない。一目惚れしたんだ!リラに…」
リラは抱きしめられて、サボの鼓動の早さをその耳に感じ、さらに彼の背中に腕を回し、服をギュッと掴んだ。
その行動に、サボはより力を込めて彼女を抱きしめた。
「…サボの心音、早い…よ?」
「リラを抱きしめてるからな。」
その時、なんのイタズラか雷がバルティゴに鳴り響きはじめた。
「…きゃあッ!」
驚いて、サボに身体を密着させると、サボは宥めるようにリラの背中をさすった。
「俺の腕の中なら、怖くないだろ?大丈夫、このままそばに居るから。」
…ピカッ!
部屋に稲光が差し込み、次に来るであろう音に、身体を強ばらせた。
「怖い…サボ。」
ゴロゴロ!ドーン!
「音が…嫌…」
リラは、抱きしめている腕の中で涙目で震えていた。
「リラ、ちょっと待ってな。毛布借りるぞ?」
そう言うと、サボはリラから身体を離して、彼女のベッドの毛布を取り、頭から被せた。