第4章 もう一度触れたくて
「…リラに…キスした…」
サボは大きくため息をつきながら、何があったかを話し始めた。
「へぇ…なんで、そんなことに?」
コアラは、扉を背にして寄りかかりながらサボの話を聞いた。
「雷に怖がるリラがあまりに可愛くて…抱きしめたら…したくなって…」
「無理やりではないってこと?」
「気づいたら引き寄せられるようにキスしてた…可愛い抵抗には遭ったけど。でも引っぱたかれたよ、可愛い人なら誰にでもキスするのかって。好きじゃなくても簡単にするんだ、って。見損なったってさ…」
落ち込むサボを見て、コアラはため息をつく。
「サボくん…リラにちゃんに惚れてるよね?」
「…え…あ、いや、ち、違うよ…」
サボの声色からは、ちょっとした焦りのようなものが読み取れた。
「サボくん、誤魔化してもわかる。というか、わたしが男なら、確実にリラちゃんに惚れる。だから、別に隠すことじゃないけど、順番がおかしいよね。ちゃんと気持ち伝えてからすべきだったんじゃない?」
コアラの言葉にさらに項垂れるサボ。
「まぁ、可愛いからキスしたくなるの分かるけど…わたしだってリラちゃん可愛いと思うし…でも、可愛い子なら誰にでもってことじゃないこと、好きな子じゃないとしないってこと、ちゃんと分かってもらうしかないでしょ。」
「…どうやって…」
「どうせ、引っぱたかれて、そのままなんでしょ。話し合いもしてないんだ?」
「…その通り…」
コアラは、大きくため息をつくと、サボの耳を引っ張り、部屋を出ていく。
「…痛ててっ!コアラ、離せ…」
コアラは、リラの部屋の扉を再び叩いた。
「リラちゃん、いる?」
「おい、コアラ、離せって…」
小声で耳を離すよう訴えるサボ。
少しして、リラが扉を少し開け、顔をひょこっと覗かせると、コアラがサボの耳を引っぱって部屋の前に立っていることに驚く。
「…サボ…」
「二人とも、ちゃんと話し合いなさい。二人で気まずいなら、わたしが間に入るけど?」
「…わかった、二人でいい。コアラは部屋に戻れ。」
サボは、何かを決めた様子で、低い声でコアラに指示した。
「わかった、何かあったら呼んで?」
サボを彼女の部屋に押し込め、ひらひらと手を振り、コアラは自室に戻った。