年齢=恋人いない歴の私が神様の嫁候補にされてたんだが
第1章 #01
私の瞳からぽろぽろと涙が零れ落ちる。
青年は私の頭を撫でる。
「大きくなったらいつか忘れてしまうかなって
思っていたから大丈夫だよ。
気にしないで。」
「はい。というか近いですよ。お兄ちゃん。」
私は青年を構わず兄と呼び続ける。
名前がないのでは兄としか呼びようがない。
心なしか青年の顔が近い。
両掌で青年の頬を押し出そうとする。
青年の頬の感触が温かい。生身の人間の感触と同じだった。
感触が同じなのが不思議でならない。
青年は落ち込んだような様子を見せる。
「兄呼ばわりとは…。」
「何か違うんですか?
神様だけどお名前教えてくれないんでしょう?」
青年はぼそりと私の耳元で呟く。
「名前はまだないから教えられないよ。
私は商売繁盛の神の部下で、この家に君という名の
対価をもらいに来たんだけどな…。」
「…?」
私は首を傾げた。
「なんでもないよ。聞かなかった事にして。」
「うん?」
私はきょとんとして青年のほうを見つめる。
私は口を開けて欠伸し、掌で欠伸をしている口を隠す。
青年に眠いと訴える。
「話し込んでたら眠くなっちゃいました。」
「おやすみ。名前。」
私は電気を消し、ベットに横になり布団をかけて寝る。
心なしか青年に後ろから抱き付かれて、
添い寝されてるような感じがした。
振り返ると、青年は既にいない。
「なんか一瞬ぺったり抱き付かれててた…?」
私は困惑したまま眠りに堕ちる。