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年齢=恋人いない歴の私が神様の嫁候補にされてたんだが

第5章 #05


見知った砂利道の山道に私は着ていた現世の服に着せ替えられ、放り出された。
周りを見渡したが青年の姿は見えない。
青年の代わりに黒揚羽が私の前に現れた。
道中に細かい紫の蝶も現れる。
私を囲うように黒揚羽が舞う。
私の先を黒揚羽は進む。
私はついていった。
そこには一軒の神社があった。
古びた看板には「愛欲と商売繁盛の神」と書かれているだけで、
神の名前は書かれていなかった。
相合傘になっていて相手は…。
苗字名前命。
誰かの落書きにしか見えなかった。
苔の生えている岩と立派な大樹がある。

「なんですかこの落書きは。
…命ってつければいいと思ってるんですか!」

 私は思わず突っ込んでしまった。
私はこれが何を意味しているのかわかっていない。

「こんなところに神社ありましたっけ。
そういえば昨日バイトだったような気がします。
会社に連絡をしないと。」

 私はポケットからスマートフォンを取り出す。
そして
バイト先の会社の事務所に連絡を入れた。
不穏な音と共にメッセージが流れる。

「お掛けになられた電話番号は現在使われておりません。」
 
勿論家にかけても繋がらない。
同様のメッセージが流れた。
カレンダーの西暦と時計の表示がなんだかおかしかった。

「嘘でしょ…?本当に現世なんですか…?」

 私は泣きそうになる。
黒揚羽が慰めるように私の肩に止まった。

「…。」

 黒揚羽が拝殿のほうへと行っていなくなってしまう。
まるで黒揚羽がこっちへ来てと言ってるみたいだ。
とりあえず参拝だけしておくかと、
鈴を鳴らそうとした時。
守護神である青年が現れる。

「現世に帰してください…お願いします…どうか…どうか…。」

 私はパニクって願い掛けをしてしまう。
青年は落ち着いた様子で話し掛けた。

「名前。何を言っているんだい。ここも現世だよ。百年先のね。私と名前は夫婦になって暮らしてるの。」
「ふう…ふ…?え…?」

 いまいち状況がつかめていない。
現世に帰すと言われ期待したら百年先の現世に連れてこられた。しかも神社にという事か。

「家族も家から神様が生まれたと喜んでいたよ。
親孝行できたじゃないか。」

 青年は微笑み、私の頭を撫でる。

「名前は帰ったらずっとひとりぼっちなんだよ?
それでもいいの?」
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