第1章 ⚫おい、起きてるんだろ?【リヴァイ】
無言で私の机に書類を持ってくる兵長に毎回ドキドキしながら、次々と判を押して行く。
気が付くと、時刻は深夜の12時を回っていた。
「そろそろ終わりにするか。」
「え……?」
兵長の方に目を向けると、まだ半分くらいの書類が残っている。
「後は俺がやっておく。助かった。」
聞き慣れない兵長の不器用なお礼。
嬉しい筈なのに、終わりの言葉だと思うと寂しくなる。
まだ兵長と一緒に居たい。
喋らなくてもいい。
同じ空間に居るだけでいい。
もうこんな機会は二度と無いかもしれない。
そう思うといつもより積極的になった私は、気持ちがバレる事を覚悟し、口を開いた。
「あの…もう少しお手伝いしたらいけませんか…?」
紅茶を作り直している兵長に恐る恐る、聞いてみる。
「手伝ってもらいてぇのは山々だが、明日の訓練に支障を来たすと面倒だ。これを飲み干したら、さっさと自室で休め。」
そう言い、私の机に紅茶を置いてくれる。
「あ、ありがとうございます…。でも、私なら平気です!訓練もバッチリやりますから!」
「バッチリだと?お前今日ペトラに投げ飛ばされてたじゃねぇか。」
「うっ……。見てたんですね…。」
「当たり前だ。」
ここに留まれる上手い言葉を必死に探してみるが、恥ずかしさと自分の不甲斐なさで軽く落ち込む。
「………チッ、そこのソファで少し横になれ。」
「へ?」
「休んだら、再開してもいい。」