第1章 ⚫おい、起きてるんだろ?【リヴァイ】
訓練が終わり、ボロボロになった体をお風呂場で癒す。
その後軽い夕食を摂った私は、早足で兵長の執務室へ向かった。
ドアを叩くだけなのに、緊張して手が震える。
「あのっ、ナナです!」
「入れ。」
中から聞こえてくる低い声を合図に、ドアノブを回した。
「し、失礼します…。」
執務室に入ると、兵長の目線が書類から私に移る。
その瞬間、兵長の眉間にいつもより深いシワが作られた。
「……髪が濡れてんじゃねぇか。」
書類を置き、スっと椅子から立ち上がる兵長にハッとする。
(綺麗好きな兵長を怒らせちゃった?!)
「あっ!!すみません!滴り落ちては無いと思いますが、今すぐ戻って拭いてきますっ!」
「誰もそんな事言ってねぇだろ。風邪でもこじらせたら面倒だろうが。」
そう言いながら衣装ケースを開け、私の方へ向かって来る兵長。
渡された物は、綺麗に折り畳まれたタオルだった。
「へ……?」
てっきり怒っているのだと思っていた私は、予想外の展開に拍子抜けした声が出る。
まさか三年もの間片思いしていた兵長から
タオルをお借り出来るなんて思ってもみなかった。
「ありがとうございます!!」
思った通り、いや、それ以上に優しい兵長を拝見して更に好きになってしまう。
平然を装うが、今の顔はかなり赤いと思う。
「お前はここでやれ。この書類に判を押すだけでいい。」
「あっ、はい!」
ハッとした私は我に返り仕事モードに入る。
兵長の机の近くに設置された予備の机の上を見てみると、予想以上に書類がビッシリ積み上げられていた。