第1章 巨大樹の森に連れてって
「まぁ、それはどうでもいい。本来なら新兵を案内するのはハンジの役だがあいつは今出てる。
だから代わりにオレが来たわけだが...オレも暇じゃないんだがな...
まず、てめぇがこれからやることは部屋の掃除だ。あと...それ、上着をさっさと脱げ」
「はい?なんでですか...?」
いきなりなんで脱がなければならないのだろう。この人は変態なんだろうか。
サイはリヴァイを不審な目で見た。
「何見てやがる。こっちに着替えろ」
自由の翼の紋章が入ったジャケットがどさっと置かれる。
「...上着、着替えないといけないんですか?」
サイが首をかしげて尋ねると、リヴァイは、は?という思い切り不機嫌な顔をした。
「馬鹿かおまえ。調査兵になるんだから所属兵団の物に着替えるのは当たり前だろうが」
「はい...」
しかし、体験入団でも着替えなくてはならないのだろうか。
これ以上この粗暴極まりない兵士長にたずねるのもためらわれたので、おとなしくその上着を手に取った。
サイは一般兵士の使う兵舎の3階の角の部屋に連れてこられると、掃除用具を手渡された。
個室だが、寝台がひとつ壁際にぎちぎちに配置され、天井が斜めで半分低い。居住するにあたり、その有効スペースは限りなく狭い。そして長い間使われていなかったらしく、リヴァイが扉を勢いよく開いたためほこりが雪のように舞った。
「ここがてめぇが今後使う部屋だ。チリひとつ残らないよう掃除しろ。またあとで点検してやる。今日やるべきことは、たったこれだけだからな...きっちり手を抜かずにやれ」
そういってさっさと踵を返して行ってしまったリヴァイの背中を見送って、部屋を見るとため息をついた。
入団体験、というのを少々甘く見すぎていたのかもしれない。
勿論、上げ膳据え膳で快適な宿泊ができるとは思ってはいなかったけれども。
まさか、いきなり掃除からとは。これが調査兵団流のやり方なのか...
サイは腕まくりをすると、気合を入れて掃除した。