第5章 密かな想いの伝え方【三輪】
チーム訓練を終えた三輪隊一行は、前方に小さな人だかりがあるのを目にして足を止めた。数人が一人の小柄な女子を囲っているように見える。
「んん?あれって水無月隊の女子達か?」
米屋が遠くを見る様に手を目の上に当てて前方を見る。長身の女子がまず目に入る。それから彼女より少し低い背丈の女子に、二人よりぐんと小さい女子。その周りをまた数人が囲っているような感じだ。
ふと長身の女子が三輪達に気づき、笑顔で手招きをした。それにつられ、米屋を先頭に彼等は歩みを進めた。
「何やってんの?こんなところで」
「なつめがクッキーを焼いてくれたんだ」
砂羽が彼女の頭を撫でながら言う。森道なつめ、水無月隊のスナイパーであり、彼女達の中での最年少隊員だ。
「なつめのお菓子すごく美味しいんだよね」
「あ、ありがとうございます」
蓮実に褒められ、なつめは照れて頬を染めた。
「しかも可愛くラッピングまでしてくれるもんだから、ほんと女の子だよな」
「これは、その、この方がお渡ししやすいですし、食べやすいだろうからと思って…」
「照れるな照れるな」
なつめの手にはトレイ。その上にはラッピングされたクッキーがいくつも並んでいる。
「あの、よろしければ、米屋さん達もどうぞ」
「え、まじ?やりぃ」
なつめに言われ、米屋に続き奈良坂、古寺、月見もそれを手に取っていく。段々と減っていくトレイの上のクッキー。三輪はその様子を、じっと見ていた。
「秀次はもらわねーの?」
「…俺は」
すぐそこなのに、なかなか手を伸ばすことができない。「貰って来てやろうかー?」の米屋の声は聞こえないふり。だがそれは、向こうの方からやって来た。