第5章 密かな想いの伝え方【三輪】
「あっ、あ、あのっ、み、三輪さんも、よろしければ…」
いつの間にかトレイは彼女の手の中に無く、両手でその包みを差し出された。思わず一時停止してしまった三輪の表情を、おそるおそるなつめは見上げた。
「…」
「…」
「…もらっておく。……ありがとう」
「っ!」
三輪がそれを受け取ると、硬かった彼女の表情が一気にほころんだ。そして彼女はがばっと勢いよく一礼すると、一目散に走り出した。
「!?」
「あっ、なつめ!転ぶなよー!」
小さくなっていく背中に砂羽が声をかける。あっという間に彼女の小さい背中は見えなくなってしまった。突然の事に三輪は唖然として驚きを隠せない。その様子を見ながら蓮実がどこか楽しそうに笑みを浮かべていた。
「何々?何かあんの?」
「米屋くん鋭いねぇ」
そっと米屋が蓮実に耳打ちすると、彼女は同じくこっそり彼にソレを明かした。
「三輪くんのだけ、1枚形がハートなの」
密かに伝える、この想い。