第3章 まどろみへのいざない【ヒュース】
「…」
「…」
「おちたな」
「落ちたね」
そっとヒュースの頭から手を離すと、僅かに首が前に傾く。目を閉じて静かな寝息を立てる姿は、どう見てもごく普通の少年である。希咲は小さく笑みを浮かべて彼の頭を優しく撫でた。
「さて、何かかけるもの持ってくるね」
「うむ、おれはおちそうなおかしをきゅうしゅつするぞ」
希咲がリビングを後にし、陽太郎がヒュースの手から溢れそうなお菓子を回収する。その後はそれぞれソファに座り、しばらくヒュースの寝顔を眺めていたという。
(少しは気を許してくれたなら、いいな)