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あなたとの日常、あなたとの恋事情【ワートリ】

第3章 まどろみへのいざない【ヒュース】





「ねぇヒュース、角触らせて?」




「断る」




ソファに座って陽太郎とおやつを食べていたヒュースは、突然訊かれたそれに、3秒ほど間をおいて答えた。「えー」と不満の声を上げる希咲をよそにまた一口。
「いいじゃない、ちょっと触るだけ。ね?」
「……」
「ヒュースぅ」
「……」
もぐもぐごっくん。そして数秒後の溜息。
「…触るだけだからな」
「はーい!」
観念したヒュースにいい返事を返し、希咲はぐるりとソファ越しに彼の背後に回る。そっと手を伸ばし、彼の側頭部に生えている角にそっと触れた。
「おぉ…硬い…」
「…トリガーだからな」
するりと角を這う指先。触感は無いはずなのにむず痒く感じるのはなぜだ。よくわからない感覚にヒュースが眉を寄せた、その時だった。

わしゃっ。

「!?」
角ではない部位に触感があり、ヒュースは思わず振り返ろうとした。だがそれは希咲の手によって阻まれる。
「はいそのままそのまま」
「な、おい…」
わっしゃわっしゃと髪を撫ぜる手つきは、犬などを愛でるそれに似ている。大雑把のようで乱暴でないそれは不思議と嫌な感じではなく、振り解こうにも振り解けない。
「ふふふ…ヒュースもとりこになってしまうといい」
「何…?」
突然の陽太郎の言葉にヒュースが怪訝そうな顔をする。すると陽太郎はキラリと目を輝かせ、ビシッとヒュースに言い放った。
「なにをかくそうきさらちゃんは、〝わしゃわしゃのたつじん〟なのだ!!」
「…………なんだそれは」
わけがわからない。未だされるがままのヒュースは目を細めたが、不意に何かくらりと揺れるものを感じた。その様子を見て陽太郎がにやりと笑みを浮かべる。
「からだはすなおよのう」
「な、に…?」
とろりと襲われる感覚。すぐ後ろで「あんたどこでそんな言葉覚えてきたの」と言う希咲の声が聞こえた気がしたが、頭の中にまでは入ってこなかった。

そして、数秒後。
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