第8章 何処にも【分隊長ハンジさん】
「ハンジさん!!」
なまえは医務室の扉を勢いよく開ける。
そこにはベッドに寝かされたハンジ。
眠っているのかピクリとも動かない。
「うそ、ハンジさん・・・」
なまえは口に手を添え、
涙目になりながらハンジに近づく。
酸素が上手く脳まで回らない。
落ち着け、心の中で何度唱えても
上手く息ができない。
ハンジの姿をはっきりと視界に捉える。
腕は骨折しているのか添え木が当てられ、
頭部にも包帯が巻かれている。
信じられない。
調査兵団である以上、
近いうちに別れが来るかもしれない。
それは誰しもが思うことだ。
だが、いつもそれは急で絶対に慣れることが無い。
穏やかな寝息をたてている目の前の存在も、すぐ静かになってしまうのではないか。
なまえはすっと胸が冷たくなるのを感じた。
そっと頬の擦り傷に触れる。
すると、ゆっくりと眉が寄せられた。
「ハンジさん・・・・・・!」
「ん・・・・・・なまえ・・・・・・」
その瞬間、
なまえの瞳からは大粒の涙が溢れ出す。
ハンジが呆気にとられているとなまえは胸の中に飛び込んだ。
「何っ、してるんですか・・・!
もう・・・っ、死んじゃうのかな、って・・・」
ばか、と言いながらハンジの胸を叩くなまえの頭をハンジは腕で包み込んだ。
「痛いよ、なまえ・・・」
目の前で涙を流し続ける愛しい人の頭を撫でながらハンジは掠れた声で笑うと、小さく「ごめん。」と呟いた。