第3章 好きです、ハンジ先生!【科学教師のハンジさん/転生】
1人になった室内で
へなへなと座り込んだ。
「まさか記憶が・・・・・・」
紅茶作戦がこんなにも上手くいくなんて。
なまえは酷く動揺しているようだった。
味覚によって記憶が呼び起こされたのだろうか。
そうだとすればやっぱり目の前のなまえはあのなまえだったんだ。
瞳に熱いものがこみ上げる。
なんにせよ明日早くなまえに合って確かめたい。
でもそんなことは迷惑じゃないだろうか、
ずっと貴方の中の前世を想い続けていました。
なんて、前世で付き合っていたならまだしも
ただの片想いだった私の立場から言えば変質者も甚だしい。
なにより、今のなまえの存在を蔑ろにした時点できっとなまえは傷つくだろう。
「ああ゛~~~っ! どうすればいいんだっ」
その時、準備室の扉が開いた。
「ん。いい匂いだな」
エルヴィンだ。
部屋の中を見渡しながら室内へ入ってくる。
手には私に渡すよう言われたのだろう書類を持っていた。
「紅茶を飲みながら生徒の指導、か。
優雅だな」
「アハハ、嫌味ー?
ノックもしないで入ってくるなんて貴方らしくもないね、エルヴィン」
「ノックならしたさ。
君が気づいていなかったんだろう」
エルヴィンは吹き出すといい香りだ、と
まだ誰も口をつけていない私の分のティーカップを手に取りひと口、口に含み飲み込んだ。
「これは・・・・・・」
エルヴィンは少し目を見開いたあと
ふっと目を細めた。
「いい茶葉だ」
「そう・・・?ありがと」
今も昔もこの男の考えていることは読めない。
とりあえずここはお褒めの言葉に礼を言うことにした。
エルヴィンは近くにあった椅子に腰掛けると紅茶を片手に話し出した。
「ここに来る途中、急いで帰っていくなまえを見たよ。
下校時刻ギリギリまで勉強とは
君たち2人は本当に仲がいいな」
「私の授業をすごく気に入ってくれたみたいでね。
毎日のように通ってくれてるよ」
「あぁ・・・そうみたいだな」
エルヴィンはふっと紅茶を見つめると
ゆっくりと顔を上げ私を見据えた。
「それで、
生まれ変わったかつての想い人の記憶を呼び覚ますためにこんなものまで用意したということか」