第22章 狡くてゴメンね【分隊長ハンジさん・R18】
「・・っ」
とうとううまく息もできなくなって、嗚咽まで溢れ出したなまえをハンジは近くのベンチに座らせ優しく背中を撫でている。
その手は昼間エルヴィンがなまえに触れたように優しかった。
そう思うと、どこまでも彼に縋りついている自分が浅ましくて、また泣ける。
一体、自分は何のために泣いているんだろう、叶わないなんて分かっていたじゃないか。
でも、寂しいのだ。
どれだけ思っても彼にとって私は、”良い部下”で。
少し褒めれば、微笑めば、優しくすれば、喜んで尻尾を振って、なんて扱いやすい。
私はどんなに酷いことをされても絶対に貴方を恨んだりしないから、何でも受け入れるから、他の女のところになんていかないで欲しい。
なんて自分本位で、浅ましい。
結局自分可愛さなのだと、そのためにハンジにも心配をかけて。
変わらずに肩を抱き、髪を撫で、涙を拭い、ひたすらに優しくしてくれるハンジに甘えている。
「なまえ、少しは落ち着いた?」
緩やかになった涙を指先で拭いながら、ハンジは困ったように笑いかけてくる。
なんでこんなにハンジが傍にいると落ち着くんだろう。
女友達のはずなのに、中性的な声か、何がそうさせるのか分からないが、ハンジにはまるで恋人に包み込まれているような、友達にはない安心感を感じる。
「ちょ、なまえ!?」
気が付けばハンジの胸に顔を埋めていた。
そこには自分と同じ柔らかな膨らみがあって、ハンジは女性なのだと心が安らぐような気がした。
それは、下心など起きるはずがないだろうという、女友達特有の気のゆるみ。
ハンジは溜息を吐くと、なまえの髪に触れ、ゆっくりと頭を撫でた。
その間もなまえの身体はピッタリとハンジにくっついたまま。
「・・・・こうしてると落ち着く」
「・・・全く。子供みたいだ」
ハンジは呆れた声を出しながらも、優しく、片方の手で頭や背中を撫でながら、空いた片方の手でなまえの毛先を弄んでいた。
しかし、暫くするとゆっくり頬に触れ、なまえを上向かせる。
月明かりに照らされてハンジの優しい瞳が鈍く光っている。
見つめ合うような体勢に首を傾げていると、ハンジの顔が近づき、唇に柔らかいものが触れた。