第21章 温泉に行こう【団長ハンジさん・R18】
「あー、久しぶりの風呂は身体に染みるねえ。」
まるでおじさんの様に湯船に浸かって寛ぐハンジに思わず噴き出すと、なまえもいそいそと湯船に浸かった。
その様子を穏やかな表情で見つめているハンジは、湯気で使い物にならなくなった眼鏡をいつの間にか浴槽の縁に置いていた。
「なまえ、」
二人でも十分すぎる大きさの浴槽にたっぷり張られた丁度いい温度のお湯を興味津々といった様子で眺めていたなまえはハンジに名前を呼ばれ、声の方へ顔ごと視線を向けた。
眼鏡のないハンジにとってなまえの顔ははっきり見えていないだろうが、なまえからははっきりとハンジの表情を伺うことができる。
ただ穏やかにこちらへ向けられた表情は、眼帯さえなければまるで外の世界へただ夢だけ見ていたあの頃に戻ったようで。
「おいで。」
そう言って古傷の染みついた腕を伸ばされれば、喜んでその腕に引かれてしまう。
浴槽の縁に背を持たれかけたハンジの上に身体ごと包み込まれるように受け止められると、どちらからともなく口づけを交わした。
「邪魔だね。」
「ふぅ、ん」
身体を覆っていたタオルをはぎ取られると素肌が絡み合う。
何度もキスを交わしながら少しだけ湯に濡れた毛先が互いの肌に絡み合い、ほんのり上気した肌や湯気によって睫毛についた水滴がいつにもまして艶っぽい。
ハンジの以前より伸びた前髪が口付ける度顔に掛るので、そっと避けると
肌とは違う無機質な物が指先に触れた。
左目を覆うそれに円を描くように指先で触れる。本人にはその刺激は感じられないようで、ただ見つめているだけだと思われているらしい。
依然として穏やかな表情がなまえを見つめていた。
なまえからはっきり口にしたことはないが、何となく避けられているであろうその行為を求める言葉が口から滑り落ちた。
「これ外してもいいですか?」
一瞬、ハンジの身体が強張ったが
困ったようになまえを見上げて笑った。
「・・・・醜いよ。」
なまえは静かに頭を左右に振る。
気まずそうにするハンジをよそに
そっと眼帯の上から瞳に口付けた。