第21章 温泉に行こう【団長ハンジさん・R18】
自分が楽しむついでにハンジさんにも楽しんでして欲しかったのに。
一人ずつ。
というなまえの嘆きは呆気なく、浴室へ続く脱衣所の扉が閉まる音にかき消されてしまった。
「本当に一緒に入るんですか?」
「今更恥ずかしがる関係でもないし。
そもそも、私は眼鏡がなければそんなに見えないし恥ずかしくないでしょ?」
「いやあ、ベッドとお風呂は勝手が違う気が・・・」
渋るなまえにハンジは痺れを切らすと少し強引に距離を詰め、耳元で囁いた。
「私はなまえと一緒に入りたいけど駄目かな。」
「ん」
自然と口から声が漏れた。
普段でも高すぎず低すぎず心地のいいアルトが、今は少し息を含んで艶が増している。
何度も情事の中で囁かれてきたその声色に自然と身体が反応し、ぎゅっと両目を閉じてしまう。
「駄目・・・?」
追加の一押しでもう負けだ。
愛する人のお願いを無下に断れる人がいるなら紹介して欲しい。
「・・・脱いでる間は絶対にこっちを向かないでください。」
頬も耳も真っ赤だろうが、なけなしの威厳を振り絞って断固とした鋭い視線を送るとハンジは面白そうに喉を鳴らした。
「女同士なんだからそんなに恥ずかしがらなくてもいいのに。」
「女同士ですけど友達じゃないですから。」
「・・・うん、そうだね」
団服とは違う島外用の衣服を脱ぎ去ると下着も丁寧にたたみ、大きめのタオルをピッタリと身体に巻き付けた。
後ろを振り返ると、眼鏡と眼帯は付けたままだが生まれたそのままの姿で突っ立っているハンジになまえは唖然とする。
「その、恥じらいとか」
「いや、すぐそこなんだから」
この人に恥じらいを求めた自分が馬鹿だったと溜息を吐くなまえをよそに、ハンジは扉を開けずんずん進んでいく。
みるみるうちに真っ白に曇る眼鏡にハンジは歓喜の声を上げた。
楽しそうに頬を高揚させているその姿を見ると自然と笑みが零れる。
石造りの床に、綺麗な木目に四辺を囲まれた浴槽からは木のいい匂いが辺り一面に漂っている。
「すごい湯気だねえ」
キヨミさんが"素敵"と表現するのも頷ける。
言葉通りとても素敵なお風呂だ。