第20章 気持ちに名前を付けるなら【分隊長ハンジさん】
「私がエレンを本部まで連れていく!」
「頼んだぞ、なまえ!」
「っ、我が班の勝利を信じてます!ご武運を!!」
この調査の真の目的が判明した後、
兵士に扮した女型の中身が巨人化し、グンタを殺した。
その後、見事な連携で女型を追い詰めていくリヴァイ班を目に、エレンも前に進む決心がついたらしい。
必ず、エレンを本部へ送り届ける。
そう思った矢先に、エルド、ペトラ、オルオが次々に倒れていく。
調査兵団の精鋭たちの死に知性を持った巨人の恐ろしさが否応にも背筋を凍らせる。
「エレン!」
手の甲に噛みつこうとするエレンを制すると、女型に向かってガスを噴かせた。
何とか、エレンだけでも守らなければ。
時間を稼ぐことができれば援軍も見込めるかもしれない。
一人でそんなことができるとは到底思えなかったがやるしかなかった。
ただ、もうハンジさんには会えないかもしれない。
特別作戦班の任に就いてから十分に顔を合わすこともできなかったけど、ずっと好きだった。
まさかこんな風に最期を迎えることになるとは。
ハンジさんの開いていく未来を、自由をずっと見ていたかった。
女型の攻撃をかわしながら皮膚を削いで時間を稼ぐが、時折皮膚が固く刃が通らない。
エレンは逃げ切れただろうか。
そんなことを確認する余裕もなくなっていたが、次々と折れていく刃に、残りも少ない。
「うっ」
刃の残数に気を取られていると、女型の攻撃に体勢を崩した。
そのまま女型の腕にワイヤーを掴まれる。
しまった・・・・!
とうとう終わりらしい。
ガスをめいっぱい噴かしたが、視界がぐらりと揺れると大きな衝撃が背中に走った。
そのまま段々と意識が薄れていく。
ぼやける視界の中でまぶしい光が見え、唸り声が聞こえた気がしたがそれを確認することはできなかった。