第17章 キスから先の進め方【分隊長ハンジさん・R18】
団長室から執務室に戻ると書類を提出するだけでどれだけ時間がかかっているんだとモブリットにこっぴどく叱られた。
その横で可笑しそうに笑うなまえを見て、愛おしいと同時に誰のせいでこんなことになったかと憎まれ口の一つでも言ってやりたくなったが、そんなことはできるはずもなく今日も滞りなく執務を終えた。
日はすっかり沈み夜も更けた頃、蝋燭の明かりのみに照らされた自室でドアをノックする音が響いた。
控えめなその音は誰かなんて聞かなくても分かる。
我ながら緩んでしまう単純な頬を何とか引き締めると扉を開いた。
「いらっしゃい。」
「お邪魔します。」
いつも通り風呂も済ませ寝るだけの格好で訪ねてきたなまえからは石鹸のいい香りがした。
支給品の同じものを使っているはずなのにどうして私からは同じ匂いがしないんだろう。
その匂いがうつるくらい君に深く触れたいのに。
昼間リヴァイに言われた言葉で煩悩をかき消すと、柔らかい髪に触れ後頭部に口づけをするに留まった。
「ふふ」
くすぐったそうに身をよじる姿がなんとも心臓に悪い。
人の気も知らないで呑気な子だ。
むしろ私の方がケダモノみたいじゃないか。
そっと鍵を閉めるとなまえの手を引きベッドに腰かけた。
胡坐をかき、その上に彼女を誘導する。
向き合う形になるといつもより距離が近いためか目の前の影は照れくさそうにはにかんだ。
「寝ないんですか?」
「ちょっとだけ、こうしてたいんだけど」
優しく、だが離さないように彼女を自分の腕の中に閉じ込めると耳元でだめ?と囁いてみた。
これで妖艶な吐息の一つでも漏らしてくれれば、理性なんて吹っ飛んで強引にでもことに及んでしまっていたかもしれない。
だが今までそうなっていないのだから都合よくそうなる訳もなく、ただ可愛いとしか言いようのない笑顔が返ってくる。
「ふふ、甘えん坊ですか?
もしかして昼間モブリットさんに怒られて意外と凹んでるとか」
「モブリットには悪いと思ってるけどね・・・」
極めつけは他の男の話題。
モブリットであっても今この場で聴きたい名前ではない。
眼鏡を外すとそっと顎に手を添え口を塞いだ。