第15章 溺れる【分隊長ハンジさん・R18】
「いやー、申し訳ない!
貴方の素敵な御召し物は濡れていませんか?」
「あ、いや・・・いっ」
ハンジは甲斐甲斐しくその場に跪くと男の衣服を確認する振りをするついでに、周りにばれぬようなまえの腰を馴れ馴れしく掴んでいた掌を抓った。
男は反射でなまえから離れるが、男に口を開かせぬよう畳みかけるように言葉を繋ぐ。
「この方たちと話しているのがとても楽しくて、つい手にグラスを持っているのを忘れてしまいました!
いやぁ、本当に申し訳ない。
何はともあれ貴方の高級そうな御召し物を汚してしまわなくてよかった。隣の女性は私の部下のようですし、私が引き取りましょう。」
豪快に笑うハンジに一同が呆気に取られていると、ハンジはなまえの腕をつかみ出口に向かって歩き出した。
「お騒がせして申し訳ない。
皆さんはこれからも夜会をお楽しみください」
そう言って退出する際、なまえの瞳を捉えたのは呆れ顔で頭を抱えるエルヴィンの姿だった。
重厚な扉が閉じられると、一気に静かになった廊下をハンジは無言で進んでいく。
この先はホテルのある棟で今晩はそこそれぞれ一人ずつ宿をとっていた。
方法はかなり強引だが、この人なりに事を荒立てぬよう助けてくれたのだと。
そうとしか感じられず目の前の背中に抱き着きたくなるが、ハンジはそれを許さず無言で歩いていく。
部屋の前に着くとハンジは鍵を取り出し、自分の部屋の扉を開けようとする。
「あ、ハンジさん、その私はこれで。
ありがとうございま、んっ」
何か喋らなければと発した言葉はすぐに飲み込まれた。
腕を引かれハンジの腕の中に納まると、
強引に後頭部に手を添え唇を押し当てられる。
眼鏡がなまえの肌に触れ、無機質な音を立てる。
そのまま、ハンジの宿としてあてがわれた部屋へ吸い寄せられた。
ハンジは手早く鍵を閉めると、扉と自分の間になまえを閉じ込めさらに唇を啄んだ。
「っ、」
何も言葉を発してくれないハンジへの不安と息苦しさとで彼女の胸を押し、声にならない抗議を上げる。
それでも角度を変え触れるだけのキスを続けるハンジに今度は強めに胸を押すと、鬱陶しく思ったのか扉に手をついて身体を閉じ込めていた腕に捕らえられた。