第14章 ちっちゃくなっちゃった!?【分隊長ハンジさん】
「分隊長、なまえの様子はどうですか」
食堂に行くと心配そうなモブリットに声を掛けられた。
「ああ、ご飯食べたら満足して寝てるよ。」
「そうですか・・・」
それでも何か言いたそうなモブリットは本当に彼女を心配しているらしい。
「ねえ、モブリット。」
「なんですか」
「私さ、穏やかに寝息を立てるなまえを見てこのままの方がこの子にとって幸せなんじゃないかって思っちゃったんだよね。」
「ハンジさん・・・」
「潜在意識では私のことが好きだって覚えてるみたいだけどこのまま全部忘れて兵士じゃなくて普通の・・・結婚とか、子供産むとか、そういう普通の幸せを」
「何を言ってるんですか!」
実験以外で滅多に声を荒げることのない彼が
突然大きな声を発した。
自分でも驚いたのか咳払いをしゆっくりと息を吐くと口を開いた。
「あなたはそれでいいんですか。」
「え・・・」
呆気に取られているとモブリットが続ける。
「なまえの言葉を聞いていないのに
勝手に諦めるなんてハンジさんらしくないですよ。」
「モブリット・・・」
彼は困ったように笑った。
「何より、なまえがいなくなるとあなたの面倒を見てくれる人がいなくて困ります。」
「ひどいなあ」
モブリットらしい励ましに思わず笑みが零れる。
「早く元の彼女に戻るといいですね。」
「私もそう思うよ」
頼れる部下にお礼を言うとなまえが待つ執務室へと向かう。
なまえが元に戻ったら、
今まで以上に好きだって気持ちを伝えて、
そっと頬に触れて恥ずかしがって真っ赤になる彼女の姿に
心の底から可愛いなぁなんて思ってキスをして、
抱きしめたらこの世界中の誰よりも優しく愛したい。
部屋の片付けも少しはやろうかな、なんて。
きっと続きもしない目標を考えたりする。
さっきよりもずいぶん心が軽い。
どうなるか分からないけれど、
私は変わらず彼女のことを愛していくだけだ。
小さななまえはまだ眠っているだろうか。
彼女が起きたらしっかりと向き合おう。
そう決意して起こさないように静かに執務室の扉を開けた。