第10章 再会【分隊長ハンジさん・R18】
近くにあった喫茶店に入ると
紅茶とタルトを頼んだ。
運ばれてきたタルトにハンジは瞳を輝かせている。
「憲兵はいつもこんなお菓子を・・・?」
「たまにだよ。調査兵団はどんな感じなの?」
「んーそうだね、」
ハンジはフォークを使い、タルトを口いっぱいに頬張ると調査兵団のことや、普段の訓練、壁外調査のことなどを話してくれた。
とくに、壁外の話となるとハンジの熱は凄まじい。
彼女が部下や人類に対して真摯に向き合っていることが節々から伝わってくる。
「すごいね・・・・・・ハンジは」
一通り聞き終わると
自然とそんな言葉が零れていた。
「なまえだって凄いじゃないか。
訓練兵団では成績上位で憲兵団に入団して、
壁の中の秩序を守ってる。」
ハンジの言葉に再び胸が傷んだ。
私はこの人に誇れる生き方をしていない。
流されるままに、
命令ならばどんなに汚い仕事でもこなしてきた。
「・・・そんなに立派じゃないよ・・・・・・」
「なまえ?」
俯くなまえの顔をハンジは覗き込む。
「私は、
ハンジに凄いなんて言われるような仕事してないよ。」
なまえは“特別任務”のことを
思い出すと気分が悪くなった。
口を押さえてうずくまるなまえの肩をハンジは抱いた。
「なまえ、大丈夫?
すぐに行くから店の外で待ってて」
ハンジはなまえを扉の近くまで送ると
会計をするため店の中へ戻っていく。
なまえはそのまま外に出ると膝を抱えてうずくまった。
“特別任務”はハンジと再会した夜の後も行った。
自分の身体は汚い。
そんな身体でハンジに触れ、並んでいいわけがない。
ますます負の感情に呑み込まれると
頭上から声が降ってくる。
「なまえ」
ハンジは店から出てくるとなまえの肩を支え、抱き起こした。
そのまま歩き出す。
「ごめんね、ハンジ。
せっかくの休みなのに」
「気にしてないよ。
私が嫌な事聞いちゃったんでしょ」
なまえは鼻がツンとした。
ハンジは昔と変わらず優しい。
瞳いっぱいに溜まった涙が溢れそうになった時後頭部を冷たいものが濡らした。
「やばい、降ってきた」