第10章 再会【分隊長ハンジさん・R18】
口から懐かしい名前が零れ落ちると
目の前の人物は顔をほころばせた。
「やっぱりなまえなんだね!
何年も会ってないから人違いだったらどうしようかと思っちゃった」
人懐っこく微笑む姿は昔と何ら変わらない、
共に幼少期をすごした幼馴染の姿だ。
懐かしさから目の奥が熱くなるのを感じる。
「ハンジ、どうしてここに・・・」
「たまたま内地に仕事の用事があってね。
近くに宿を取ってあってそこに帰る途中」
訓練兵団を卒団してから
疎遠になっていたとは思えないほど
自然に話してくれるハンジに安心感を覚える。
「なまえも仕事だったの?」
ハンジの言葉に心臓が跳ねた。
今まで不正な行為に身を染めていたのだ。
このことはハンジにだけは知られたくない。
「・・・うん。急ぎの仕事で」
ハンジから目を背けたくなったが
精一杯笑顔を作った。
引きつっているかもしれないが。
「なまえ、大丈夫? 顔色が悪いみたいだ。」
「そうだね・・・・・・疲れてるのかも、
・・・もう帰るよ。」
逃げるようにこの場を離れようとしたなまえの腕をハンジが勢いよく掴んだ。
その力は女性とは思えないほどに強い。
調査兵団は鍛え方が違う。
以前憲兵の誰かが言っていた言葉を思い出した。
ハンジも調査兵団に入って変わったんだ。
私だって昔とは変わってしまった。
嬉しいはずの再会に心が段々と沈んでいく。
「っ、痛いよハンジ。」
「ああ! ごめん、つい・・・・・・」
ハンジは苦笑すると続けた。
「久しぶりに会えたのが嬉しくて。」
私もハンジに会えて嬉しい。
素直な気持ちが脳裏を過ったが、
口にはできなかった。
ハンジはなまえを見つめると
優しく微笑んだ。
「今日は本当に疲れてるみたいだね。
なまえが良ければまた今度会えないかな?」