第7章 ツンツン
「…はぁ…、…」
少し荒い息を繰り返していると
翔ちゃんが俺の手を握り返してきて
身体の下側になっている手も
握って少し引っ張ってきた。
そうされると…まぁ、
俺は俯せになるよね、普通に。
「…もー…重い…」
「んー」
「んー。じゃなくて…重いってばぁ…なんなの…」
上に乗っかってきた
翔ちゃんに文句を言った。
だってマジで重い…
「はぁ……あっ…やだ、ヤんないよ、やめて」
「…………」
枕に顔を埋めているのも
しんどくて右耳を下にして
顔だけ横を向けると
翔ちゃんは翔ちゃんの目の前に
現れたであろう、俺の左耳を
ペロッと舐めてきた。
でも今日は疲れたんだ…
ヤってる体力も気力もない。
「んぅっ!やっだ…って!もう!やめろっ!やだ!」
嫌がって頭を動かしても
次は逆側の耳を舐めたり
首筋に舌を這わせてみたり。
でも申し訳ないかもしれないけど
今日はほんとに無理だ。
「…ふぇっ…ぅううっ…やだぁ…ゔぅうう…」
「…っ」
「ぐすっ、ふぅう…ゔうっ」
「ご、めん…」
「…………ふぅ…」
翔ちゃんは後ろにいる。
顔は見えない。だから
思いっきり号泣するフリをした。
そしたら翔ちゃんはどいてくれた。
優しいから。いや、ヘタレだから?
だから横を向き直して
寝やすい体勢を整えた。
「え…かず、嘘泣き?!」
「…何年一緒にいんの?」
「………うー!!!」
「…っなに!!なによっ!!?」
「せっかく…一緒なんだから、」
「…………。」
翔ちゃんに背を向けて
眠りに就こうと思っていたら
無理矢理身体の向きを変えられて
気付けば翔ちゃんの腕の中にいた。
ぎゅうっと抱きしめられて
正直ちょっと苦しい。
でも、翔ちゃんが泣きそうな声で
言うもんだから、俺は仕方なく
翔ちゃんの腕の中で
寝やすい位置を探した。
END