第7章 ツンツン
今日は結構忙しくて疲れた。
取材収録取材収録取材取材取材…
って何本とかもう数えない。
そんなのしんどくなるでしょ。
あと何本かも聞かないの。
最後だけ。最後の取材の前に
マネージャーが、これで
最後ですって教えてくれる。
それはちょっと嬉しいじゃん?
初めから知ってるとさ、
あと何本…あと何本…って、
無意識でも数えちゃうもんだよ人間て。
そしたら、まだ何本ある…って
テンション下がるか、
あと何本で終わる♪って
テンション上がるか。
そんなの不公平じゃない。
取材に来てくれる人達は、
それが1回目なんだから。
くじ引きで時間決める訳じゃ
ないんだし。不公平はだめ。
っていう、持論の元、大量の
取材を受けさせてもらってる。
まぁ…最後にはやっぱり疲れます。
僕だって人間ですからね。
「かずー。寝た?」
「んーん。」
最後の取材が、翔ちゃんと一緒だったから
ほぼ必然的に一緒に帰ってきた。
今日は俺んち。
別に意味はない。
俺の家のほうが近かったから。
それだけのこと。
あ、翔ちゃんは俺の彼氏です。
今、風呂から上がって来たみたい。
「メール?」
「別にー」
「なんだよ~。目の前に彼氏がいんのに秘密のメール?」
「…馬鹿じゃないの。」
「いいよ、馬鹿で。誰だよ?」
「しつこい。」
「和が答えないからだろ」
「…映画のプロデューサーだよ」
「ほんと?」
「なに?俺が信じらんないの?」
「信じてるから疑うの。」
「…面倒臭さ」
「…信じるけどさ。」
「………」
先に風呂に入った俺はもうベッドに入って
着ていたメールの返信をしていた。
相手は映画のプロデューサー。
ほんとだよ。当たり前じゃん。
「かずー?」
「…ん?」
メールも打ち終わってうとうとしてると
翔ちゃんがベッドに入ってきた。
横向きに寝ていた俺の後ろから
抱き着いてきて前に腕を回して来るから
上から重ねて軽く握った。
足も絡めてみたりして。
恋人っぽいでしょ。
「ねー、かず…」
「あーもう、くすぐったい…」
「ねぇ…」
「なに…、ん…」
頭を背中に擦りつけてきたから
身体をよじって訴えた。
何回も呼ぶから、少し振り向いてあげたら
案の定、キスされた。
別に逃げないよ、キスくらい。
苦しくなってきて握ってた手に
少し、緩く爪を立てたら離してくれた。