第1章 ふたり
side:N
「おはよーう…」
例えば、先にいたのが翔くんだったら。
俺はもっと、ちゃんと、作ってでも
普通を装って挨拶をしたと思う。
ただ、実際にいたのは相葉ちゃんで。
彼の、純粋に元気な声を聞いたら、
作る気も一瞬でなくなった。
舞台中に痛めた腰。
あれからもう数ヶ月経つのに痛みは
全くと言って良いほど取れなくて、
今日の朝、激痛が走った。
また次の仕事に支障が出ると思い、
仕事前に病院に行った。
先生の答えは、まだすぐには
治らないというもの。
どうやっても、次の仕事始め
までには無理だと。
どうしようもなくショックで…
情けなくて、悔しくて…不安で
いっぱいだったんだ……
「マッサージしてあげよっか!」
「…いいよ!お前にされたら悪化する!!」
今日は、少し体を動かすのも痛い…。
相葉ちゃんの気持ちは本当は嬉しかった。
相葉ちゃんを睨んでしまった目は、
本当じゃない。ごめんね、相葉ちゃん…
後悔しながらも、俺は痛みに負けた…。