第29章 お隣さん
二宮のスタジオを出て、
すぐ隣が松本のスタジオだが、
2人は少し廊下で話をした。
お互い、今は忙しくて
2人きりで会うのは久しぶりなのだ。
廊下なだけに、手を繋ぐことすら
許されないのだが、それでも
2人は一緒にいられるだけで
疲れも忘れられるほど幸せだった。
「二宮くん入りまーす!!」
「ふはは!!よろしくお願いしまーす!」
スタッフさんの真似をして
二宮を紹介する松本。
こちらの現場もすごく良い雰囲気だと
二宮はすぐに感じ取った。
リハーサル中もテスト中も
2人はずっと隣にいた。
こんな、あまりない機会を
2人はすごく楽しみにしていたのだ。
「潤の台本ボロボロだね」
「ん~?そうか?これまだ綺麗な方だよ」
「俺のなんて新品に近いよ!」
「お前は覚えるの早いからだろー!基本台本持ってないし?」
「ふふ…台本あっち置いてきちゃった」
「おーい!」
「大丈夫、覚えてるもん♪完璧~♪」
「そうだろうけど~」
――――――――――――
少しの出演シーンの撮影は
すぐに終わってしまう。
撮影もスムーズに進んだ。
『お疲れ様でしたー!!オールアップでーす!!』
「さすが和。完璧だな!」
「でしょ?さっき覚えたんだもん♪」
「ふふ…ありがとな、出てくれて!」
「んーん、楽しかった!」
「二宮さん、ご飯食べました?せっかくなんでうちのケータリングどうですか?」
「あー…ありがとうございます!すんごい嬉しいんですけど…パパッと撮ってサッと帰ってきてって言われてるんですよ~」
「あはは!そうなんですか!すいません、お忙しい中ありがとうございました!!」
「いえいえ!冗談ですよ!!ふふ…ありがとうございました、楽しかったです!!4ヶ月お疲れ様でした!」
「ありがとうございます!!」
「じゃあ!!すみません、失礼します!」
初めてのお偉いさん相手でも
良い意味で軽く、楽しく話せるのが
二宮だ。そんな二宮のことを
松本は鼻高々に見つめていた。