第21章 壁ドン
『お疲れさまでしたー』
「お疲れさまです~。…ねぇねぇ、壁ドンってほんとに流行ってるの??」
「ニノさん、行きますよ?」
「ん。でも壁ドンってCMで聞くよねぇ?ね?」
「そうですねぇ」
「じゃ、流行ってるのか。…んふふ。遅くまでありがとう。気をつけて帰ってね♪お疲れさまでーす」
レギュラーバラエティの収録後、
二宮はたまにお客さんに話しかける。
お客さんはコクコクと頷くのが
精一杯だが、二宮は満足そうだ。
「壁ドン、不思議でしたかー?」
「ん?んー。」
「でも、さすが、うまかったですよ?」
「ふはは。うまいとかあるの?」
「あるんじゃないですかー?カッコ良かったです。」
「そりゃ、ありがとう」
「はい、到着っ!お疲れさまでした!」
「はーい。ありがとう。」
「明日の時間、あとで連絡しますね」
「うん。お疲れさまでした~」
収録終わりの夜中、マネージャーに
送ってもらい、二宮は帰宅した。
「お。…ただいま~」
1人暮らしの部屋には
明かりが灯っていた。
「お。おかえり~」
「起きてたの…ってか来てたの」
「おう。なんか食う?」
「いらない。風呂」
「はーい。」
恋人でありメンバーの松本。
お互いの家は自由に行き来する。
「なー、ビールは?」
「もういいよ。遅いし」
「そ?珍しいじゃん。おいで。」
「…今日はなにしてたの?」
「事務所行って、買い物して、ちょっと打ち合わせして、友達と飯食って、帰ってきた」
「ふーん。」
「今日ニノさんだっけ?」
「そう。面白かった」
「それは何より。何本撮り?」
「今日は2本だけ。」
「お?珍しい?」
「かなぁ?」
ソファに座る松本の足元に
腰をおろした二宮。定位置なのだ。
「あ、やることあった。」
「へ?…いまからやんの?」
「んん…ちょっとだけ…」
二宮はふと思い出したかのように
パソコンと、周辺の電源を入れた。
ヘッドホンをつけて
画面に向かった二宮の後ろから
覆いかぶさるように前の壁に
手を当てて一緒に画面を覗く松本。