第2章 天邪鬼
「蜂蜜なくてさ。買いに行ってきたの。タイミング悪かったな、ゴメンな?」
「……、はちみつ…?」
「うん、カレー作ったの。今日はカズ、早いといいなと思って、夕ご飯。」
「……………ありがと…」
「……うん。一緒に食べよ」
「…うん、」
こんな時にも、何も言えない
自分に苛立った。
今日くらい、寂しかった、って…
潤に甘えたかったのに…
俺の性格はそうはさせてくれなかった。
「現場、来てくれてありがとな。聞いたとき嬉しかった」
「…ん、」
「そっち大変みたいだったけど…」
「結局、撮れなくて明日の朝…」
「そっか。大変だな…頑張れよ!」
「…うん、」
潤は素直に俺に話しかけてくれる。
俺は何にも言えないのに。
俺も来てくれて嬉しかったのに…
なんで言えないかな、……
「…潤、」
「な、見て!めっちゃ可愛くね?」
「あ…!ちょっとっ!!」
「大変な現場で寝ちゃって、ほんとマイペースだよな!」
「だって!!子どもら寄りかかってきて寝ちゃうんだもん!つられて…」
「ふふっ、可愛かったよ。スタッフさんたちも癒されてたし、大変そうなのに雰囲気は悪くなかった!良い現場だな!」
「…うん。」
頑張って、言おうとしたけど
潤は嬉しそうに携帯を見せてきた。
そしてソファーにいた俺の隣に座って
抱き寄せてくれた…。
俺がゆっくり頭を寄せると
潤は、言わなくても分かってるよ、って
優しく頭を撫でてくれた。
俺は久しぶりに自分から
潤に抱き付いた。
これが今の俺の精一杯だった。
「カズー、可愛いー。お前ほんと癒される…愛してるよ、カズ…」
潤はいっぱいの愛情をくれる。
抱きしめてくれて、キスしてくれて…
いっぱいの嬉しい言葉をくれる。
こんな、何も言えない俺に…。
「潤…ありがと、」
「んんー?……ふふっ…ありがとう、カズ」
俺の恋人は潤にしかなれない。
潤だけだよ。
いつか、言うからね。
待っててね、潤。
End