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短編集 MN【気象系BL】

第33章 無題




次に見た和の目はうるうるだった。
さっきと同じ様に頭を撫でたら
肩に頭を寄せてきた。
今日はほんとにダメージが
結構きているよう…

「…………」

和は、俺の肩に額を押し当てて
静かに泣いていた。

特に直接的な意味はなく、
涙を流すことがたまにある。
多分、今がそうなんだろう。
別に、今日活躍出来なかったのが
泣くほど悔しい訳じゃない。
別に、スケジュールが
泣くほどキツい訳じゃない。

和はそんなことで泣かない。


「…………」
「お。」
「…ごめん。」
「…今日、うち来るか?」
「…………」


ムクッと顔を上げた和は
心なしかスッキリした感じ。
でも…なんか、一緒にいてやりたいと
一緒にいて欲しいと言われてると
そう感じて…言うと、和は
薄く笑って首を横に振った…。




「…うまい」
「そりゃ良かった。はい、サービス」
「…ありがと、」

それから和は、ゆっくり少しずつ
カクテルを飲みながら、
サービスで貰ったパインを口にした。



それから特に話もせずに
時間は過ぎていき、もうすぐ
世の中は朝を迎える。
俺らも、ずっと起きていた訳じゃない。
和は気持ち良さそうに
うとうとしたりしてたし、
その横で、俺も少し寝た。

バーテンダーさんは今日の準備だろうか。

「…朝ご飯、食べていく?」
「んーん、、ありがとう」
「うん。」
「ごめんね、今日は」
「いいんだよ。俺はこれから帰って寝れるしね。今日の準備も出来たから少し遅くなっても大丈夫だ」
「ふふ…それは良かった」
「また、いつでも連絡して」
「うん…ありがとう。だいぶ…落ち着いた」
「良かったよ。映画、楽しみにしてるね」
「ん、」

店を出たら、まだ少し薄暗いけど
日が昇る一歩手前な感じ。
ちゃんと寝てはいないのに
なんかスッキリして
気持ちが良いのはこの店のおかげかな。


「じゃあね、潤くん」
「え?方向一緒じゃん」
「…今日はタクシーにする。歩くのしんどいし」
「…そっか。じゃ、またな」
「ばいばい」




和はそのまま、撮影に行った。

それを知ったのは、
その日の夕方、仕事で会った和が
楽屋で眠っている時 ――――



こいつの安心する場所、人には
なれたかもしれない。

でも、まだまだ本当のこいつの中を
見るのは難しそうだ…


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