第33章 無題
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「こんばんは。」
「あ、いらっしゃいませ。久しぶりですね?」
「今、二宮が忙しいんで一緒に来れなくて」
「二宮くん、地方にいたんですよね。聞いてます」
「そうですか。…あ、じゃあ…今日の、」
「オススメ、ですね」
「ふふ…」
久しぶりに、例のバーに来た。
いつも、今日のオススメカクテルを
頼むからもう覚えてくれたみたい。
「あいつ…無理するから心配なんです。俺らにも言わないんですよ…」
「そういう人ですよね。心配かけたくないんでしょう…」
「こっちからするとそれが心配なんですけどね」
「はは…間違いないですね。」
「今日だってヘトヘトで…撮影行きましたよ…」
「そうなんですか?じゃあ早く終わったのかな」
「え?」
「さっき、今から行くから店開けといて~って電話来ましたよ」
「マジ?!またあいつ疲れてんのにっ…」
「いてあげて下さいよ。言ってないんで、喜びますよ」
「…そうかな……」
「そうですよ」
ほんとに早く終わったのかな。
じゃあ帰って寝ろよって思うけど
かずにとってココは癒しの場所だから…
来ても、怒らないでやろうって思う。
「…じゅっ…!……」
「おい。逃げんなよ。閉店時間過ぎてるのに待っててくれたんだぞ」
「…なんで、、いんだよ…」
「俺が、待っててあげてって言ったんだよ」
「……。」
「強がるもんじゃないよ~。良い仲間じゃん」
「……いつもの。アルコール低めで。」
「は~い。」
和が来た時、もう店の閉店時間は
とっくに越えていた。
聞くと、こういうことは
たまにあるそうだ。
俺の顔を見た和は、
目を見開いて、一瞬で引き返した。
まぁ…引き止めたら戻って来たけど。
「……なに…」
頭を撫でてやったら
久しぶりに睨まれた。
そんなもんで怯まないけどね。
「機嫌悪いの?」
「……なんでいんの…」
「嫌だった?今日は独りが良い気分か」
「………。」
「…素直でよろし~い。」