第33章 無題
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「…ふぅ………お疲れ」
「「「お疲れー」」」
「……かず!」
ふぅっと息を吐いて、
ソファーから立ち上がって
楽屋を出ようとした二宮に、
松本は呼びかけた。
「ん?」
なに?と言うような顔で
ドアのぶに手を置いたまま
二宮が振り返る。
「…行くんでしょ??ついてっていい?」
主語が見当たらない松本のセリフに、
他のメンバーは気にしないフリを
しながらもキョトンとした表情を
浮かべて目線を交わしていた。
「……ふっ…、先歩いてるね」
「…おぅ」
他のメンバーと違い、二宮は
松本の言葉を理解し、少し笑みを
浮かべてから静かに楽屋を出て行った。
「な、どこ行くの??」
「んー…今度かずに聞けば?じゃ、お疲れ」
「…お疲れー…?」
櫻井の質問を軽くかわして、
松本もすぐに楽屋を出て、二宮を追った。
「かず!」
「…早かったね」
「もう着替えてたしな」
「そっか」
寒いね。なんて会話をしながら、
2人は目的地までゆっくりと
歩いて行った。
「いらっしゃいませ」
「「こんばんは」」
店に入ると、2人は当たり前の様に
カウンター席へ腰掛ける。
「いらっしゃい。今日は早いね」
「んー。…いつもの」
「はい。…2つ?」
「…いい??」
「ん、」
バーテンダーは2人の前に立って、
カクテルを作り始める。
二宮はボーっとその様子を眺めていた。
松本との間に会話はない。
松本は、二宮がその様子を
眺めるのが好きなことを知っていたのだ。
「はい、どうぞ。」
「ありがと」
二宮の前に綺麗な色のカクテル…
二宮専用のカクテルが出された。
バーテンダーはもう1杯の
カクテルに取り掛かっている。
二宮はカウンターに頬を近付け、
目の前にあるカクテルから
出る泡をグラスの斜め下から
ジーッと眺めた。