第33章 無題
2人で果物をつまみながら、
なにを話すでもなく、
どこかボーっとしてるにのと
内容のない会話をした。
メンバーと仕事以外でこんなに
落ち着いて話すなんて、
にのとくらいかもな…。
「明日、取材来るの?」
「…んーん、ドラマ」
「ドラマなのにこんな時間に飲んでんだ…?」
「…言わないでね?ほんと怒られる…」
「…ははっ」
「ふふっ…」
相葉ちゃんとかといるといつも
一緒に騒いで、突っ込みも激しい
にのだけど、こんな風に
まるで別人のようなクールで
弱そうな顔も持ってて…たまに
そんな瞳に引き込まれそうになる…。
「…帰るかな……」
にのの一言で俺も席を立った。
「…じゅんは?たまたま?」
この質問に、俺は少し言い訳の
ように答えた。それで、勘の良い
にのは気付いたんだろうな。
俺が追いかけてきた、ってこと。
「…ありがとね」
「んー?こちらこそ、美味かった」
「ふふ…」
ふわっと笑ったにのは
ほんとに弱い子犬みたいで。
「また連れてってね?」
「…んー、気が向いたらねー…」
「ははっ、」
と思ったら、いつものちょっと
イジワルな小悪魔みたい。
元気になってくれたみたいだし。
追ってきて正解だった。
にのみたいな、内側が読めない人に
対する行動にしては自分でも
少し勇気がいることだったと思う。
にのじゃなかったら
こんなことしなかった。
受け入れてくれて、笑ってくれた。
俺、自惚れしてもいい?(笑)
また、飲みにいこうな。
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