第33章 無題
「…なんかお洒落だね」
「ふふっ…似合わないって?」
「…いいや?…邪魔だった?」
「…だと思ったら来ないくせに」
「んー…まぁ、ね!」
「ふっ…」
潤くんはいつも俺が話しかけて
欲しくないときは楽屋でも、
必要最低限寄ってこない。
話さなくてもなんとなく
分かるんだろうな…
「怒られるぞー、明日…」
「…チクんないでよ?」
「分かってるよ…」
メンバーの中でも、同い年だからか…
潤くんとはどんなテンションでも
話が出来る。こんなバーで
落ち着いて話せるのは潤くらいかもな…
「どうぞ。」
「ありがとうございます」
「なんか食べたいな…」
「はい、果物でも」
「…いいね」
俺が飲むカクテルはオリジナル。
このバーテンダーさんが俺のために
作ってくれた俺専用。今まで
誰にも飲ませたことはなかった。
「…んーっ…これ美味いなー…!」
「…でしょ」
「オーダーメイド?」
「二宮さん専用のカクテルですよ」
「…今日は特別」
「えー…いいなぁ、かず」
「今日みたいに俺と会ったら頼んで良いよー…」
「そう言わずに一緒にこようよ?」
「ふふ、…」
たまに一言二言交わしながら
静かに飲む…。シーンとした
空間でも居心地がいいのは、
…じゅんだから、かな。
「…帰るかな……」
「んじゃ、俺も」
「ん。…またね」
「お待ちしてます…」
「ごちそうさまでした」
夜中だからタクシーも
なかなか通らないし、
2人で駅までぶらぶら歩いた。
「あそこ、常連なんだ?」
「んー、まぁ…」
「仲良かったじゃん、カクテルまで」
「…じゅんは?たまたま?」
「ん。前にさ、ダーツ行ったじゃん?」
そっか…、潤くん連れて
行ったことあったんだ。
でもあの時は隣のダーツバーに
いたからこっちのことは
言ってなかったのに…
「…ありがとね」
「んー?こちらこそ、美味かった」
「ふふ…」
「また連れてってね?」
「…んー、気が向いたらねー…」
「ははっ、」
分かってる。
知らないフリしてるけど、
潤はきっと追ってきてくれた。
理由は…俺がマネージャーの車
断って、逆方向に行ったから、
とかかな。他の人ならどう思うか
分かんないけど、…イヤじゃなかった。
いいメンバーもったな、ほんと…
side:N End