第4章 死神編【前編】
足が痺れて痛い。今すぐにでも姿勢を崩したい…しかしそれは許されない。
「昨日、十一番隊の更木隊長と本気でやり合いましたね?」
「はい…。」
「あなたの霊圧が彼に負けず劣らず強大な自覚も有りましたよね?」
「仰る通りでございます…。」
目の前には口調は幾らか優しく笑顔を浮かべているも目が全く笑っていない卯ノ花が立っていた。ゆうりは正座しながら小さく縮こまる。
昨日の一件以来逃げ回っている間に霊圧にあてられ倒れた隊士達が随分運ばれてきたらしい。原因がその四番隊だということで卯ノ花は出勤したばかりの彼女を捕まえ、もれなくお説教が始まったのだ。
「全く…本気で戦うのであれば人のいない流魂街で行って下さい。」
「肝に銘じておきます…すみませんでした。」
「分かれば良いのです。正座を解いて良いですよ。」
ようやく許しが出るとゆうりは正座を崩す。が、痺れが残る故に動けなかった。卯ノ花は執務机に戻りそのまま彼女へ声を掛ける。
「貴方の霊圧、ここにまで届きましたよ。」
「その様ですね…更木隊長と戦った事も噂として広まってしまったみたいで、かなり怖がられるようになりました。私更木隊長みたいに顔怖くないと思うんですけどね。」
「ふふ、そうですね。このような噂は時間が解決するまで耐えるしかないでしょう。」
「うぅ…やっぱり最初から全力で逃げておけば良かった。」
まさかこんな思わぬ弊害を及ぼすなんて。概ね痺れも取れるとゆうりは立ち上がる。四番隊の隊士達にまで避けられたらちょっとショックだなぁ…。そんな思いで溜息をつく。
「それじゃあ、仕事戻りますね。」
「はい、よろしくお願いします。」
執務室を後にして治療室へ向かおうとすると己を呼ぶ声がした。この隊舎の中で聞きなれない声だ。後ろから聞こえる声に振り返ってゆうりは固まった。
「あ……。」
「よっ、お前散々な目に合ってるみてェだなァ。」
「そりゃウチの隊長とやり合って勝った、なんて噂が流れれば怖がられるよ。」
昨日、十一番隊に居た木刀を貸してくれた男達だ。まさか更木の命令で連れて来るようにでも言われたのだろうか。ゆうりは露骨に表情を歪めて彼らを見た。そんな思考が伝わったのか斑目は豪快に笑う。