第4章 死神編【前編】
「はははッ、ンな顔しなくても良いだろ!!別に隊長に差し出そうだなんて考えてねーよ。」
「昨日バタバタしてろくに挨拶も出来なかったから声を掛けに来たんだよ。僕は十一番隊第五席、綾瀬川弓親。」
「俺は十一番隊第三席、斑目一角だ!!よろしくな。」
「染谷ゆうりです、よろしくお願いします斑目さん、綾瀬川さん。」
「オイオイ、一角で良い。1回といえどウチの隊長に勝ってんだ。」
「そうだね。僕の事も弓親でいいよ。」
差し出された手を握り握手を交わす。どうやら悪い人たちでは無さそうだ。少し肩の力を抜いて笑うと、握手を交わした綾瀬川が手を掴んだままジッとゆうりの顔を見詰めた。
「な、なんでしょう?」
「美しい上に、隊長より強いとは…十一番隊に移籍したらどうだい?見た所君も相当の戦闘好きだろう。」
「違いますよ。私は守る為に力をつけたいだけで、戦うこと自体が好きって訳では無いです。」
「そうかァ?その割に随分楽しそうにやり合ってたけどな?」
「……見間違いじゃないですか?」
「否定しなくてもいのに。それじゃあ僕らもそろそろ行くよ。移籍する気になったらいつでもどうぞ。」
「今度は俺と勝負しようぜ!じゃあな!!」
嵐のように去って行った彼らを見送る。ゆうりはそのまま立ち尽くし斑目達の言葉を頭の中で反芻させた。自分は戦いが好きだったのだろうか。
「痛いのは嫌だし、別に好きって訳では無いと思うけどな。」
ゆうりはそれだけ小さく呟くとふらりとマッサージ室へ足を運んだ。
四番隊は怪我をした者の治療はもちろんだが、それ以外に身体のメンテナンスなども行う。マッサージ室では主に足ツボマッサージ等が施され、よく人が来る所だ。
「失礼します。」
「おはようございます、染谷五席。」
「おはよう!」
「おはようございます!」
「おはよ〜。」
隊士達からは今までと変わらず挨拶をされた事にホッと息を着いた。四番隊では大丈夫そうだ。
それからは普段通り仕事をこなした。とはいえ今日担当しているのはマッサージ室なので、訪れた他の隊士達へマッサージを施すだけなのだが。今日は比較的人も少なく空いている時間では四番隊にのみ揃えられている医療に関する本へ目を通していた。