第4章 死神編【前編】
「テメェから向かって来い。力がどんなもんか見せてみろ。手ェ抜くんじゃねーぞ、殺すつもりで来な!!」
「…分かりました。」
ゆうりは1度瞼を下ろし深呼吸した。この手の人間は手を抜いても直ぐにバレる。それに自分の実力を知る良い機会になるかもしれない…気持ちを切り替え、しっかりと木刀の柄を握り直す。そしてパッと目を開くと同時に瞬歩を使って更木の裏へ回った。右手に木刀を持ち、肩を後ろに引いて霊力を込めたソレを脇腹目掛けて思い切り薙いだ。
ガキンッ、と激しい音を立て木刀同士がぶつかる。更木は彼女の攻撃に反応し木刀を後ろ手に持って防ぐ。
「ハッ、良い速度だ!!その勢い保てよ!!」
「結構本気で瞬歩使ったんだけどな…。」
振り返った更木は木刀を振り上げゆうり目掛け振り下ろす。瞬歩を使って空中へ避けたが、その破壊力は凄まじく、容易く地面を割る。女相手に容赦ねぇ…。草鹿を除く隊士達の心がひとつになった。
更木は宙へ逃げたゆうりを直ぐに捕捉すると地を蹴り飛び上がる。足場のない場所で木刀同士の激しい打ち合いが行われた。ゆうりは瞬歩を駆使し彼の太刀を避ける。更木は彼女の太刀を避けること無く全て受け止めた。
「チッ、足はえぇな…。」
「更木隊長はとんでもない火力ですね、こんなの食らったらひとたまりもないですよ。」
2人は地面に足を着けた。が、落ち着く間もなく互いに向けて突っ込むなり木刀同士がぶつかり合う。ゆうりは自分の中の闘争心がふつふつと湧き上がるのを感じた。徐々に、楽しいとさえ感じて来る。更木の太刀を見切り、避けながら己も刀を打ち込み隙を狙う。時折木刀が体を掠る度ぞくりと背筋が震える。1歩も引かない戦い。隊士達はどよめき、草鹿は嬉しそうにニコニコ笑う。
「ヤベぇよあの女…なんで隊長とやり合ってまだ立ってんだ…?」
「女性とは思えないタフさだね…一角。彼女、知ってる?」
「なんだ、有名なのか?」
「学生だった頃、ヒュージホロウを倒した子だよ。」
「はぁ!?見た目によらねーってのはこの事だなオイ…。」
「全くだね。」