第4章 死神編【前編】
男達が木刀をぶつけ合う姿を見ていると不意に、りん…と静かな鈴の音が聞こえた。大きな霊圧が自分の元へ向かって来るのを感じる。背後に回ったそれに反応し直ぐに振り返る。余りに威圧的で巨大な霊圧に思わず斬魄刀へ手を掛けた。
「ほう…俺の霊圧を受けて平然としてられんのか。何番隊だ?」
「あ……よ、四番隊第五席、染谷ゆうりです。更木剣八隊長、ですね?」
「あァ!?四番隊の治療班共がここに何の用だ。」
ボロボロになった隊長羽織が風に靡く。立っていたのは十一番隊隊長更木剣八だった。騒ぎを聞いた隊士達も何事かと顔を上げ屋根を見る。
「戦闘が強い十一番隊がどんな鍛錬をしているのか興味が有りまして…勝手に入ってすみませんでした!失礼します!」
「待てよ。」
彼の隣を通り抜け屋根から飛び降りようとした所でガッツリと肩が掴まれる。ゆうりの頬を嫌な汗が伝った。まるで錆びた機械のようにギギギとぎこち無く振り返ると、更木は凶悪な笑みを浮かべている。
「な、なんでしょう…?」
「テメェの反応速度はあの生ぬりィ四番隊の割に幾分良いように見えたぜ。退屈してたんだ、ちょっと遊んで行けよ。」
「あははっ、剣ちゃん嬉しそう〜!!」
「草鹿やちる副隊長!?」
「遊んでくよねっ、きらりん?」
「き、きらりん…?」
「髪の毛きらきらしてるからきらりんだよ!」
「はぁ…あの、でもやっぱり私なんか隊長には適いませんので失礼しま……あ!?」
再び逃げようと試みた矢先有無を言わさずに更木は草鹿がくっついている肩とは逆側の肩にひょいとゆうりを担いだ。そのまま鍛錬場へ足を着けると担いでいた彼女を降ろす。鍛錬をしていた隊士達は直ぐにその場を明け渡した。
「おい一角、テメェの木刀貸せ。」
「はい!!」
「じゃあ君には僕のを貸してあげよう。」
「本当にやるんですか…?」
斑目は己の木刀を更木へ投げる。肩に乗っていた草鹿は縁側へと避難した。斑目の隣に居た綾瀬川はゆうりへ近寄り木刀を差し出す。完全に断れる空気では無くなったゆうりは渋々それを受け取った。相手は隊長格、ましてや戦闘が1番得意とする隊だ。全く乗り気にはなれなかったが、彼女は両手で木刀を握る。更木は片手に木刀を持ち口角を吊り上げ笑う。