第4章 死神編【前編】
今日はゆうりにとって1日非番を与えられた日だった。時間を持て余した彼女は図書館へ赴きまだ目を通していない資料の並ぶ棚の前で佇んでいる。席官を与えられたゆうりは見られる資料の範囲は若干だが増えた。
「隊長、副隊長格の半数近くが居なくなった事件…ここに保管されてるとは思えないんだよね。どう思う?胡蝶蘭。」
ゆうりは斬魄刀となった胡蝶蘭との会話をなるべく毎日寝る前に必ず行っていた。少しでも対話を欠かさず行う事で信頼関係を築き、また精神世界まで行かずとも容易く対話が出来るようにもなった。最も、胡蝶蘭の声が聞こえるのはゆうりにのみなので傍から見れば1人で喋っているようにみえるのだが。
『事件自体を直接記す文献はまずここには無いだろうね。あるとしても、隊長格が入れる資料庫だけだろう。もっと別の視点で調べてみたらどうだい?』
「別視点?」
『例えばだけど、総隊長が何故事件を隠したいんだと思う?』
「……大量の副隊長格以上を失ったから…?」
『それも有るだろう。他に想像出来ることは?』
「えっ?うーん…。」
胡蝶蘭の問い掛けにゆうりは首を傾げた。考えあぐねる彼女を見かねた胡蝶蘭は彼女の意志を無視して勝手に具象化すると目の前に現れる。ゆうりは初めて精神世界では無い場所で見る彼に驚いた。
「胡蝶蘭、貴方具現化出来たの…!?」
『まぁね。それより、良く聞いてゆうり。』
ゆうりの驚愕する姿をサラリと笑顔で流した胡蝶蘭は人差し指を立て彼女の唇へそっと添え身を屈めた。髪と同じく真っ白な睫毛から覗く金色の瞳がゆうりを捉える。
『護廷十三隊は高尚な組織である…という建前が有るのは知っているね?自分の意志で脱退する事も許されない…そんな部隊が最も嫌う事って何か考えてごらん。』
「嫌う事…。」
虚と戦い、死ぬ事は仕方が無い事だし不名誉な事とは言い難い。仮にとてつもなく強い虚が居たとして、隊長達が多数殺されたとしてもそれは総隊長が口止めしてまで隠したい内容とは思えない。むしろ、残しておくべき事件になる。そうなると考えられるのは…。
「内部からの…裏切り……。」