第4章 死神編【前編】
「白哉が…流魂街の…?少し意外。すごくいい人なんだね。」
「無論だ。名を緋真と言う。今度紹介させてくれ。」
「勿論!!白哉が選んだ奥さんならきっと素敵な人なんだろうなぁ…。はやく会ってみたい。」
目を輝かせ想像を膨らませるゆうりは本当に心の底から祝福しており嬉しそうに見えた。何となくその姿を見るのが複雑で、朽木は無意識に眉間に眉を寄せる。
…己は目の前の彼女に一体何を期待したのだろうか。残念そうにして欲しかった?嫉妬をさせたかった?…自分でも分からない。確かに流魂街へ赴いていたのは、ゆうりを探していたからだ。しかしその過程で出会い、愛しているのは緋真の筈だ。それに間違いは無い。断じて。目の前の彼女に対する思いはそう……名前を付けたとしても単なる友愛。心の中に強くそう言い聞かせる。
それでもひとつだけ、気になる事があった。
「…貴様は恋人となる者は出来たのか?」
「え?…ふふっ、まさか白哉からそんな事を聞かれるなんて。残念だけど今もまだ恋人は居ないわ。作る気も無いの。」
「そうか…何故だ?」
「私はどうしてもやりたい事があるから。それを終わらせるまで、大切な人は作れない。」
生きているか、死んでいるかなど分からない。それを知る為過去に起きた事件を紐解き、自分を見つけてくれた浦原や優しく接してくれた彼らの真実を知るまでは余所見なんてしていられない。
強い意志を感じる彼女の言葉に朽木もそれ以上何も言う事はなかった。
「…昔と変わらぬな。」
「褒め言葉として受け取っていいのかな…?白哉はすっかり大人っぽくなってカッコ良くなったね。びっくりしたよ。」
「………。」
その素直過ぎる物言いも変わらない。思わずため息が出た。この女は一々心臓に悪い。直ぐに心を掻き乱してくる。
「それじゃあそろそろ行くね。あんまり仕事し過ぎて倒れないように気を付けて。」
「待て。」
「ん…?」
「四番隊で回道を学び終えたら、私の元で働け。」
「うーん、そうだなぁ…回道学んだ後の事は何も考えてなかったけど、それもいいかもね。考えておく!」
ゆうりは朽木に手を振りその場を後にした。まさか彼が結婚しているとは思わず驚いたが幸せそうで羨ましいな、と思う。自分も、抱えている問題を全て解決させたら結婚…なんて。
「なぁにニヤニヤしてはるん?」