第2章 過去編
「そう突っぱねなくていいではないか。ゆうり、こやつは朽木白哉。銀嶺の孫で、蒼純の息子じゃ。」
「蒼純さんの……あ、私染谷ゆうりです。よろしくお願いします。」
自分より少しばかり歳上に見える白哉に些か緊張しつつもゆうりは彼に駆け寄り手を差し出した。白哉は若干迷いを見せたがその手を握る。すると受け容れられた事が嬉しかったのかゆうりはへらりと気の抜けた笑みを見せた。
朽木は己の心臓がどくり、と強く高鳴った気がした。その意味が分からず眉を寄せる。
「…なるほど、まだまだ青いの白哉坊。」
「何の話だ。」
「赤いぞ。」
「…ー!黙れ!!」
ヒュッ、と音が立つほど振られた木刀は相変わらず四楓院を捉えること無く空を切った。
心底楽しそうに見える彼女の姿にゆうりは声を潜めて笑う。
「そろそろ本題に入るか。白哉坊、ゆうりは霊圧のコントロールがまだ出来ん。教えてやってはくれんか。」
「何故私が。」
「見ての通りワシは忙しい。他の隊長も然りじゃ。それに教えるなら歳が同じ位のお主の方が良かろう。」
「………。」
朽木は1度彼女を見やった。ゆうりはまさか彼に頼む事になるとは思っておらず、困ったように眉を下げる。出会ったばかりの朽木に、こんな事をお願いしても良いのだろうか、迷惑では無いだろうか。そんな感情が渦巻く。
「人に教える事もまた成長へと繋がるぞ。」
「…………分かった。だが貴様は帰れ化け猫。邪魔だ。」
「言われんともそのつもりじゃ。ではゆうり、また夕方迎えに来るぞ。」
「え!?あっ…はい!」
ニンマリ唇に弧を描かせた四楓院はひらりと手を振りその場から消えた。残されたゆうりはぽかんと唇を開く。四楓院を嫌い、何処か冷たそうな印象を与える彼が頷くとは思っていなかった為驚いた。
「…あの、ありがとうございます。朽木さん。」
「…構わん。私の事は白哉でいい。祖父や父を知っているのだろう。」
「はい、たまにお話させて頂いています。白哉さんはお父様そっくりですね。」
「よく言われる。…ゆうりはあの化け猫の親戚か何かか?」