第2章 過去編
「いえ、私は霊力が凄く高いらしく…今は作って頂いた制御装置である程度抑え込まれて居ますが、もしも壊れたり何かあった時に流魂街で住むには危険との事で浦原さん…十二番隊隊長に拾って頂いたんです。今は隊舎でお世話になっています。霊圧を調整出来るようになるまでの特例措置だそうです。」
「それで私の元へ連れてこられたのか。」
「はい!いつまでも死神の皆さんにお世話になるのは申し訳無くて…少しでも早くコントロール出来るようになりたいんです。よろしくお願いします!」
「分かった。だが私は優しくはないぞ。」
本当にただ何となく、意地悪のつもりで出た言葉だった。ニコニコしている彼女がどんな表情をするのか見たい、そんなちょっとした好奇心にも近いものだ。しかしゆうりは怯えたり驚いたりする事はなくキョトンと目を丸くしたかと思えば可笑しそうにクスクスと笑う。
「…ふふ、そうなんですか?白哉さん、蒼純さんと同じ位優しい瞳をしてるのに。」
「な……ッ!」
予想だにしていなかった返しに顔に熱が集中した。優しい?私が?言われたことも無い言葉だ。
朽木は片腕で顔を隠しそのまま背けた。感情を乱されるような感覚が理解出来ない。ドクドクと内から響く心音がやたらと煩く感じる。
「…もういい、始めるぞ!」
「はい!頑張ります!」
朽木は自分の不可解な感情から目を背ける様に言い放った。知ってか知らずか、ゆうりは大きく頷く。そんな2人の光景を屋根の上からじっと見つめる黒い猫が1匹。ゆうりと朽木は小さな影に気付く事は無い。
「ふふ…面白いものが見れたわ。この様子なら問題無さそうじゃな。」
楽しげにそんな呟きを残し黒猫は音もなくその場から消えた。
*