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【R18】月夜に咲く華【BLEACH】

第3章 真央霊術院編



ただ逃げただけなのにこんな言葉を掛けられるなんて、なんて凄い人だろう。俺だったらあんな状況下で咄嗟に他の奴へ逃げろ、なんて指示は出せない。この心の強さが彼女が人を魅了する理由の一つなんだろうか。
青鹿がそんな事を考えていると、ゆうりは檜佐木の後ろ姿を見詰めた。彼だけは全然こっちを見てくれない。不審に思ったゆうりは檜佐木の席へ足を運び、顔を覗き込ませた。

「…修兵?」

「っ……あ…悪い、用事思い出した。」

顔を合わせると弾かれたように檜佐木は立ち上がり足早に何処かへ行ってしまった。あまりに素っ気ない態度にもそうだが、虚に付けられた顔の傷が残ったいた事にも驚く。あれは治せなかったのだろうか…?
ゆうりは避けられた事に傷付きその場に立ち尽くす。

「……怒ってる…?なんで…?」

「…檜佐木くん、ゆうりちゃんを守れなかったって凄いショック受けてたの。」

「私を?」

ゆうりは檜佐木の出ていった扉を見詰める。彼の向かった先は何処だろう。瞳を閉じて集中し、檜佐木の霊圧を感じ取る。向かった先は……以前2人で話をした森だ。

「修兵と話して来るね。」

「うん、行ってらっしゃい。」

踵を返し、彼を追って教室を出た。
森に着くと檜佐木は木の上の枝に座ってぼんやりと空を見上げている。ゆうりは彼の真下まで来るなり口元に手を当て大声で呼ぶ。

「修兵!!」

「…ゆうり。」

名前を呼ばれた事にビクリと身体を揺らした檜佐木は上から彼女を見下ろした。観念したのか、少し間を置いた後木から飛び降りゆうりの前に立つ。それでも視線は合わなかった。

「いきなり避けるなんて酷いじゃない。」

「なんつーか…合わせる顔、無くて。」

「そう?顔に傷が出来てちょっと男前になったんじゃない?」

「そうじゃねぇよ、馬鹿。」

茶化す様な言葉を紡ぐゆうりに檜佐木は口から息を吐き出した。なんて言っていいのか悩む。彼女に掛ける言葉が見つからない。市丸に言われた事が頭の中で反芻される。

「…あのさ、修兵は私の事ちゃんと守ってくれたよ?」

「守ってねぇよ…!俺は、虚も倒せなかったし、何もしてねぇ…。」
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