第3章 真央霊術院編
会話を終えた浅田はそのまま去って行った。ゆうりは今度こそ教室へ足を運ぶ。
扉を開くと、一気に教室が静まり返る。まるで幽霊でも見ているような顔を向けられゆうりは1歩たじろいだが、教室中を見渡し昨日一緒に居たメンバーを探す。青鹿、蟹沢、檜佐木の3人とも登校している姿を見て肩を撫で下ろした。
そんな彼女の元へ特進クラスの生徒達が、わっと集まる。
「染谷さん!大丈夫だったんですか!?」
「怪我は!?死にかけたって聞いてびっくりしました…。」
「ヒュージホロウを一撃で倒したって本当!?」
「あはは…大丈夫です、ありがとうございます。倒せたのはまぐれですよ。」
苦笑い気味に答えつつ、生徒を掻き分け蟹沢の元へ向かった。彼女はゆうりを見るなり今にも泣きそうな程瞳に涙を滲ませる。ゆうりは片手を上げてひらりと揺らした。
「…ただいま。ほたるちゃん、1回生を守ってくれてありがとう。」
「っ……お礼を言うのは私の方だよ…!!ゆうりちゃんが居なかったら、死んでた…。本当にありがとう…!!」
蟹沢はたまらず椅子から降りてゆうりへ駆け寄り抱き着いた。もしも自分を助けたせいでゆうりが死んでいたら、と考えると気が気じゃなかった。心臓が押し潰されそうなほど不安だった。
けれど彼女は無事帰って来てくれた。それが嬉しくて、自然と涙が零れ落ちる。ぐずぐず鼻を啜り、泣く蟹沢の背中をゆうりは優しく撫でた。
「卯ノ花隊長がちゃんと治してくれたよ。もう大丈夫!」
「痛かったよね…ごめんね…!!」
「ううん、痛くない。ほたるちゃんが死んじゃう方がよっぽど怖いし、痛いもの。あんな怪我たいしたことないよ。」
「うぅ…ゆうりちゃんが男の子だったら私絶対惚れてたよ…。」
「ふふっ、それは嬉しいなぁ。」
袖口で涙を拭うと蟹沢は身体を離した。青鹿もゆうりの元へやって来る。2人を見る限り、特に大きな怪我も無さそうで安心する。
「染谷さん、昨日はありがとうございました!」
「いいえ、青鹿さんも1回生を先導してくれてありがとう。2人が居なかったら被害者が出ていたかもしれないから。」