第3章 真央霊術院編
再会してから、すぐこんな事をする…?何の話や。ボクがゆうりに会ったの、昨日が初めてのはずなんやけど。
…まさか。
頭の回転が早い市丸はゆうりの言葉から推測出来た事に表情には出さずとも内心苛立ちを覚えた。
「最低な事言ってる自覚ある?」
「…あらへん。」
悟られぬように、悪びれなくケラケラ笑った市丸にゆうりはため息を吐き漏らし再び彼の胸板へ額を押し付けた。
「…今日のギンは昔と一緒で怖くないし、安心する。もう少しだけこうしてもいい…?」
「ええよ、気ぃ済むまでボクんとこ居り。」
ゆうりは少しだけ腕の中で気持ちが落ち着いて行くのを感じる。そんな彼女を見下ろした市丸は普段浮かべている笑みを深めた。
キミを傷つけたのは、昨日の事も含め全てボクらなのに。何も知らんゆうりが泣いて、絶望して、それでもボクは無害だと信じて縋りに来るのが気持イイ。感情をぜーんぶ独り占めしているみたいや。真実を知った時は、今度どんな顔をボクに見せてくれるんやろ。楽しみでしゃあないわ。知らん間に出し抜かれていたのは心底腹立たしいが…二度とあの人にゆうりは触らせん。
そんな彼の歪んだ愛情にゆうりは気づくことは無い。ただ数時間の間、不気味な程に優しい笑みをしている市丸へ身を委ねるのだった。
*