第3章 真央霊術院編
彼女の表情の変化に気が付いた藍染は、密かに笑みを浮かべた。先程迄の優し笑顔とは全く違う、新しい玩具でも見つけたかのような表情だった。けれど俯くゆうりはそれに気付かない。
「…染谷くんがいなくなってから、消えてしまった隊長、副隊長を教えてあげようか。」
「良いんですか…!?」
「どうせ死神になったら分かる事だからね。総隊長命令で、理由は言えないし結局どうなったのかも詳しく知らないが…。」
「…教えて下さい。」
藍染の口から並べられた隊長、副隊長達の名前にゆうりは愕然とした。四楓院、鳳橋、平子、蒼純、六車、久南、愛川、矢胴丸、猿柿…そして浦原。いくらなんでも多すぎる。
「全員、時期は一緒なんですか…?」
「朽木蒼純副隊長は戦死だ。それ以外のメンバーは…同時期だよ。」
「……そうですか。」
いったい、どんな任務に携わって何が起こったのだろう。知る術がない。図書館の本など既に殆ど読み尽くしてしまった。残るは…隊長格のみが入れる保管庫と地下議事堂大霊書回廊だけだ。
「あんま首突っ込まん方がええよ。その話されるん、他の隊長さんあんまいい気せぇへんみたいやし。」
「それ程大きな事件だったのね。」
「そうだよ。染谷くんは浦原隊長と家族に近い存在だったからここまで教えたが…絶対に他言無用だ。いいね?」
「…はい、教えて下さりありがとうございました。そろそろ行きますね。」
ゆうりは力無く返すと立ち上がった。すかさず市丸も立ち上がり彼女の背中へ手を添え、藍染に顔を向ける。
「すんまへん、送ってきますわ。本調子ちゃうみたいやし。」
「頼んだよ。ギン。」
「大丈夫だよ、ちゃんと戻れるから。」
「ボクがもうちょいゆうりと話したいだけや。そんならええやろ。」
「…うん。ありがと。」
市丸に連れられて隊首室を出ていく。あまりのショックに頭が働かなかった。親しくしてくれた人達は、もう皆いない。死神になる決断をするのが遅過ぎたのだ。生きてるのか死んでるのかも藍染の言葉からよく分からなくなってしまった。心に穴が空いたかのような強い喪失感が襲う。